まだ休職する前、適応障害の前兆症状が現れたころ、一気に食欲が減った。
昼休みもおにぎりかサンドイッチをかじりながら、PCに向かって仕事をしていた。昼休みになんらかを胃に入れられれば良い方で、夕方近くなって昼食を取っていないことに気づいて、オフィスの1階にあるコンビニに慌てておにぎりを買いに行き、MTG中に「昼ごはん食べはぐちゃってて。サーセンサーセン」と言いながら齧ったりしていた。
業務量に圧迫されて、ちゃんとした食事を食べる時間がなくなっていることが原因なんだと思いこんでいたけれど、そもそも食に対するモチベーションが湧かなくなっていたと思う。空腹感も感じなかったし、咀嚼することも面倒で、ちょっと食べてもすぐに食べる気を無くしてしまう。
並行して、(食事だけが原因だとは限らないが)体力も落ちていった。
タンパク質を取ったら集中力が戻ってきたことがあった
疲労が溜まり集中力が落ちてきている自覚はあったので、珍しく20時台に仕事をぶった切って帰宅した日のこと。
帰り道に夫に帰宅する旨をメールすると「最近ろくなもの食べてなさそうだからタンパク質食ったほうがいい。タンパク質をとにかく買って来るんだ!」との返信が来た。そんな食欲ないんですけれど…と思いながらも、コンビニでサラダチキンと、豆腐とキムチを買った。豆腐にキムチと納豆を乗っけたものをつまみつつ、ビールを飲み、サラダチキンをむしゃむしゃ食べて、よく眠った。
やらなきゃいけないタスクをぶった切って帰宅したのだから、不安はいつも以上なはずなのに、その日はここ最近で一番熟睡したんじゃないかってくらい、よく眠れた。
そしたら、不思議なことに翌日のわたしは元気だった。集中力が戻っていた。
常時のわたしは、1時間半〜2時間半とその日によって時間は違うのだが、ものすごく集中力を発揮できる時間帯が1日に1、2度ある。が、疲労が蓄積するようになってからは、その「超集中タイム」は訪れなくなって久しかった。
その超集中タイムが、翌日に久しぶりに起こったのだ。もちろん、早めの帰宅も効いたのかもしれないし、タンパク質の摂取だけが要因とは言い切れないんだけれども。
それから、咀嚼する気力がないときでも、夕飯に豆腐や納豆を積極的にとるようにしていた。
タンパク質の役割
ご存知の通り、タンパク質は筋肉、骨、血液など体のほとんどの元となる栄養素。
休職してから、「あのタンパク質による元気回復効果・超集中タイムの再来は幻だったのか?」と思って調べてみたら、タンパク質はセロトニン、メラトニン、ドーパミンなどの物質の生成にも必要な栄養素だった。
タンパク質は20種類のアミノ酸から構成され、生体機能を維持しており、脳の成長、 機能の発揮に欠かせない。さらに、タンパク質の構成成分であるチロシン、フェニルアラニン、 トリプトファンなどの必須アミノ酸は神経の活動の伝達に不可欠な神経伝達物質を作る。アドレナリン、ノルアドレナリンなどは交感神経の活動を支える。トリプトファンはセロトニンになり、 私たちの気分を明るくする作用を持ち、欠乏するとうつ病になるおそれがあることが知られてい る。実際、うつ病の患者はセロトニンの値が低いが、それはセロトニンがすぐに分解されるから であることを示唆するデータが得られている。
わたしは素人なので、素人ながらの理解しか記載できないのだが、セロトニン、メラトニン、トリプトファン、ドーパミンなどは主に以下のような役割を果たすらしい。
脳内物質あれこれ
セロトニン
セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンは、脳内や中枢神系で働く三大神経伝達物質と呼ばれていてる。その中でもセロトニンは脳内神経伝達物質の一つで、ドーパミン、ノルアドレナリンを制御し、精神を安定させる働きをする。
快楽や喜びの感情を司るのがドーパミン、怒りや不安の感情を司るのはノルアドレナリン。要は、セロトニンは、この二つの神経伝達物質を制御し、精神を安定させる働きを司っている。
感情や記憶を司る大脳辺縁系にセロトニンが伝達されると、不安や恐怖感が抑えられ、精神が落ち着いたり、痛みが和らいだりする。ノルアドレナリンの作用を抑える働きも持っていたりする。
逆に、セロトニンが低下すると、これらドーパミン、ノルアドレナリンのコントロールが不安定になりバランスが崩れ、攻撃性が高まり、また、不安や焦燥、緊張といった感情を引き起こすとされている。
睡眠中はセロトニンの分泌が抑制されていて、朝が近づくと徐々に放出される。太陽の光が網膜に入ると、セロトニン神経が刺激され、セロトニンの分泌が活性化する。太陽の光を浴びてからセロトニン分泌の活性化までには15分くらいかかるらしい。
だから医者が「朝起きたら30分外に出て散歩をしろ」というわけだ、なるほどね納得。
メラトニン
メラトニンはトリプトファンからセロトニンを経て体内合成される。
日中に強い光を浴びる、つまり目から強めの光が入ると、メラトニンの分泌量が減って目が覚めやすくなる。逆に、夜に暗くなってくるとメラトニンの分泌量が増える。要は、日中に分泌されたセロトニンが、夜になると睡眠を促進するホルモン、メラトニンになってくれる。
メラトニンが脈拍・体温・血圧などを低下させることで、睡眠の準備ができたと体が認識して、睡眠に向かわせてくれるというわけ。
また朝日を浴びて規則正しく生活することで、メラトニンの分泌する時間や量が調整され、人の持つ体内時計の機能、生体リズムが調整されるらしい。
トリプトファン
セロトニンは、体内にアミノ酸の一種であるトリプトファンという栄養素を取り入れることで合成される。要はセロトニンが合成されるまでのプロセスに必要なのがトリプトファン。
トリプトファンが腸から取り込まれたあと、血液の中を循環し、腸や脳などトリプトファン水酸化酵素という酵素をもった細胞によってセロトニンが合成される。
ドーパミン
「快楽」の源となる物質。やる気・動機づけ、集中力、生産性を上げる鍵となるもので、生活をエネルギーに満ち溢れたものにしてくれる。また、ドーパミンレベルの低い人は、カフェイン、砂糖、また他の刺激物に依存している傾向があるとかないとか。
以下はおまけ。
アドレナリン
ストレスに反応して分泌される物質。基本的には、危機に瀕した際に、生き残るために分泌される「火事場の馬鹿力」ホルモン。
常に身体や筋肉を限界まで酷使してたら、もちろん体は耐えきれないわけで、通常時は無意識に脳がリミッターをかけていて自分自身のことを守ってくれている。でも、アドレナリンがたくさん分泌されるとリミッターが外れた状態になる。
例えば、原始時代であれば、怪我をしたときに痛みで足を引きずっていたら獣に襲われる、というようなシーンで、現代であればイライラ、不安、恐怖、緊張というネガティブな感情に襲われているようなときに、リミッターを外すために分泌される。
アドレナリンは心身を興奮させるホルモンで、分泌されると運動能力や判断力が上がって、やる気が生み出されたり、仕事ではリーダーシップを発揮しやすくなると言われていますが、その反面、攻撃的になって怒りっぽくなったり、キレやすくなるという面もある。
ノルアドレナリン
神経を過敏にし、人を攻撃的にする物質。
ストレス過多になると、ノルアドレナリンの分泌量が増え、長期間のストレスにらされた人々には、ノルアドレナリンの濃度が高まっているという研究結果もあるらしい。
これは、体がストレスに対して闘争態勢に入ろうとするため。
ノルアドレナリンを多く分泌させないようにすることで、攻撃的・衝動的な感情から自分を解放させることができる。更に、セロトニンやドーパミンの分泌を促すことで、プラス思考で考え、楽観的に物事を捉えることができる。
ちなみに、アドレナリンとノルアドレナリンは、ともに快感物質であるドーパミンを前駆体として合成されるらしい。ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンは、どれもを神経を興奮させる物質なので、抗ストレス作用を持つ。
適応障害で悩む人々は、セロトニンやドーパミンの分泌量が低いらしい。なるほどね。
お薬のこと
抗鬱剤として、よくSSRIとSNRIって言うのを耳にするけれど、ついでだからそれについてもちょっと調べてみた。
興味ない方や「そんなの知ってる」って方は読み飛ばしてください。
SSRIもSNRIも抗うつ薬なんだけれど、それぞれ対象とする脳内物質が違っていて、SSRIはセロトニンを、SNRIはセロトニンとノルアドレナリンの両方をターゲットにしている。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
セロトニンを神経が吸収できるようにするためのもの薬だとぼんやり認識していただけれど、実はこの「再取り込み阻害薬」っていうのがずっとよく理解できてなかった。
神経①(シナプス前<ニューロン)から放出されたセロトニンは、神経②(シナプス後ニューロン)にある<セロトニン受容体(セロトニン搬入口)に作用して吸収される。シナプス間に貯まったセロトニンは、セロトニントランスポーター(セロトニンの回収業者的なもの)によって神経①に再取り込み(回収)されてしまう。
<うつ状態にある人はセロトニンの濃度が低下している傾向があって、かつセロトニン受容体にセロトニンが作用しにくい状態となっているという仮説があるらしい。
そのため、SSRIはセロトニンを放出する神経①のセロトニントランスポーター(回収業者)に選択的に作用し、セロトニン再取り込みを阻害する。その結果としてセロトニン濃度がある程度高く維持されるということ。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
シナプスにおけるセロトニンとノルアドレナリンの再吸収を阻害することで、これらの神経伝達物質の濃度を増加させる。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がセロトニンのみの再吸収を阻害するのに対して、SNRIではさらにノルアドレナリンの再吸収を阻害することによって、興奮神経を刺激する。そのため、興奮に起因した不眠症のような副作用も生じやすい。
騙されたと思って、とにかくタンパク質をとってほしい
トリプトファンはアミノ酸なので、タンパク質の多い食品にたくさん含まれている。
例えば、牛乳、チーズ、大豆製品、魚、卵、肉、穀物といった食べ物に多く含まているらしい。不眠にホットミルクといわれるのも、牛乳に含まれるトリプトファンの効果を期待してのことだとか。
その他のおすすめはバナナ。
トリプトファンの含有量は100g中15mgとそれほど多くない食材なんだけど、セロトニンの材料として必要となるトリプトファン、ビタミンB6、炭水化物のすべてを含んでいるため、効率的にセロトニンをつくることができるらしい。ゆっくり朝食が取れない朝に、バナナと牛乳とか、バナナとヨーグルトノスムージーで凌ぐ、というのはアリなのかも。
あと、個人的には豆腐をおすすめしたい。
冒頭にも書いたが、気力・体力・食欲低下の段階まで行っていると、咀嚼するのが本当に億劫。少なくとも休職前3週間ほどのわたしは、口をもぐもぐして、肉とか魚を飲み込む、そんな気は到底怒らなくて、ぶっちゃけ流動食的なもので済ませたい、と思っていた。
その点、豆腐はトゥルンと飲み込めるし、上にキムチや納豆を乗せてみたら発酵食品も取れるので、腸内もいくぶん整う。
咀嚼する気力はまだあるんだぜ!って単身者の方はサラダチキンとかね。
わたしは最近、気力と時間がある時に鶏ハムを作りおきして、サラダに乗せたり、おつまみにしたり、そうめんやうどんに乗っけたり、小腹が空いたらむしゃむしゃ食べたりしてる。
以下のサイトに食品中のトリプトファン含有量(可食部100gあたり)の一覧表が掲載されているので、詳細を知りたい方はご参考までに。
「トリプトファン」を摂って、しあわせホルモン「セロトニン」を増やそう! | 知っ得!ワンポイント食コラム | こころ×カラダ つなげる、やさしさ。健康応援サイト|山梨県厚生連健康管理センター
健全な魂は健康な肉体に宿る。今日食べたものが明日の肉体を作る。
タンパク質を食べよう、ね。