365日の顛末

こころとからだの健康、不妊治療、キャリア。試行錯誤の365日の記録。

MacBook Proを修理に出して、Apple Storeのスタッフの対応に感動した

先日、プライベートで使用しているMacBookが動かなくなってしまった。

わたしが使っているのは、ちょうど2年ほど前に購入したMacBook Pro 13である。

 

動かなくなった理由に、心当たりはある。

心当たりもなにも、開いたMacBookのキーボードにお茶を溢してしまったのだ。

砂糖などが入っていないただのお茶だったことは不幸中の幸いだと言えるのかもしれないけれど、当然焦った。
MacBookのキーボード面、トラックパッド面の水分をよく拭き取り、即座に電源を切った。

 

PCやスマホなどの電子機器に水をこぼしてしまったとき、水没させてしまったときの対処法として、

  1. すぐに電源を切る
  2. 完全に乾いて水分がなくなるまで電源を入れないこと

というのを聞いたことがあったので、それに倣うことにした。

 

デスクの上にタオルを引き、MacBookを90度に開いた状態で、キーボードの部分がデスク上のタオルに接触するように置いて(キーボードの隙間に入った水が拭き取れ切れていなかったとしても、基盤に染み込まないように、キーボードを逆さにした状態にした)、2日放置してみる。

 

 

2日後。

祈るような気持ちで、MacBookの電源ボタンをONにすると。

 

電源が入り、ディスプレイが明るくなり、普段と同じ、パスワードを入力する画面が出てきたではないか。

よかった、無事だったんだ。わたしは胸を撫で下ろした。

が、次の瞬間、わたしの安堵は木っ端微塵になる。

パスワードを入力するためにキーボードを叩くが、なにも入力されないのだ。試しに端から順にすべてのキーを叩いて行ったが、どのキーも入力されることはなかった。ついでにいうならば、トラックパッドも無反応。画面に表示されているカーソルはぴくりともしない。

 

キーボード・トラックパッドの損傷なのか、基盤自体も損傷しているのかを切り分けるために、仕事で使用しているUSBマウスをMacに接続してみたところ、カーソルは正常に動いてくれた。

ということは、キーボードの交換だけで済むかもしれないな。淡い期待を胸に、Apple Store表参道のGenius Barの予約を入れた。

 

 

 

2日後の土曜日に予約可能な空き枠を見つけた。一時期はGenius Barの予約を取るのに難儀して、週末とあれば2週ほど先でなければ予約出来なかったように記憶しているが、コロナ禍が影響しているのだろうか。

 

何はともあれ、予約を入れた時間に夫とふたり、表参道のApple Storeに向かった。

 

PCが壊れたのだから、不要不急ではなく「必要緊急」なのだ、と言い聞かせながら歩く表参道、それでも外出といえるような外出は久しぶりなので、理由もなく心が弾む。

Apple Storeの前に着くと、店舗の前に客が列を作っており、入店しようとする人々をApple のスタッフが整理していた。「密」を避けるための入店制限である。

列に近づくとスタッフに用件を尋ねられる。MacBookを修理したいこと、事前にGenius Barの予約を取っていることを伝えると、予約時間・名前を確認され、Store側の情報と照合した上で、別の列に並ぶように指示をされた。どうやら、予約なしで商品をみるために来店している人と、予約している人を振り分けて別の列に並べるようなオペレーションになっているようだ。

指示された通り、予約のある人の並ぶ列に移動すると、「最近発熱していないか、海外の渡航がないか、咳が出たり味覚がおかしいといったことがないか」をスタッフに確認される。どれにも該当しない旨を伝えると、手指消毒様のアルコールジェルで除菌を済ませた後、手首で検温機され、店内に案内された。

予約時間の5分ほど前に店舗に到着したが、ほとんど待ち時間もなく、想像以上にすんなりと入店することができた。

 

f:id:sophy365:20210121213333j:image

 

入店後、担当のスタッフと対面した後、MacBook Proにお茶をこぼしてしまったことを伝えた。

「なるほど。」担当の方は言う。「キーボード、トラックパッドのみの損傷か、その下に設置されている基盤まで水が浸食していたかを確認したいと思いますので、MacBookをお預かりしてよいですか。」

もちろんです、お願いします、と答えると、わたしのMacBookを片手にその人はバックヤードへ消えて行った。

 

待つこと5分ほどだろうか。程なくして戻ってきた担当の方は「確認したところ、基盤は水をこぼした影響はないようです。」とにこやかに言った後、修理の見積書をわたしの目の前のデスクの上にひらりと置いて、こう続けた。

「なので、キーボード、トラックパッドのみ交換してみて、問題が解消されるかをまず確認したいと思っています。お客様が使用されているこちらのMacBookは、キーボードの初期不良が頻繁に起こる機種でして。今回のキーボードの交換については、Apple クオリティプログラムで対応可能ですので、無償交換させていただいて、様子をみさせていただければと思います。」

説明を聞きながら見積書に視線を落とすと、本来であれば4万円ほどかかる費用がApple クオリティプログラムで対応するために0円となると記載されている。

「ただ、キーボード、トラックパッドを交換した上でもエラーが発生する可能性もあります。その場合には、基盤の交換が必要になると思いますが、内容によって7、8万円ほどの修理費用がかかってまいります。その金額となると、修理するか、もしくは買い替えも視野に入れていただいた方がよいかもしれませんね。そのような形で対応させていただいてよいでしょうか。」

「もちろんです。ありがとうございます。」


修理が完了したら電話で連絡をくれるとの説明を受けて、MacBookを預けてApple Storeを後にしたのが17時頃であった。

 

 

 

帰る道すがら考えた。

 

今回はわたしが手を滑らせて、MacBookにお茶をこぼしたことに端を発する修理のはずである。偶然、修理可能な品番だったとは言え、Appleの立場で考えればそれを無償で対応する必要はなさそうなものである。

もちろん、一消費者としてはこの厚遇は非常にありがたいのだが、そのあまりに誠実な対応に正直、面食らってしまった。

日計足らずして歳計余り有り、ということなのだろうか。顧客を満足させてLTVを向上させるためには、足元の修理費用など痛くはないという器の大きさを感じた。

加えて、担当してくれた方の対応の良さと、その他のスタッフの方のオペレーションの美しさ。Appleのスマートさを凝縮したような時間を体験して、感動を覚えた。

 

 

 

その日の19時半を回った頃のことである。

 

iPhoneに着信があった。画面を見てみると、見慣れない固定電話の番号が表示されていた。番号から察するに、都内からの連絡である。

まさかその日のうちに修理完了の連絡が来るとは思っていなかったわたしは、誰からだろうと訝しげながら着信に出たが、なんとApple Store 表参道店からだった。

昼間に対応してくれた担当のスタッフの方は言う。

「修理が完了しまして。まず、キーボード、トラックパッドについては、修理交換をすることで問題なく動く状態になっています。起動自体も問題なくできています。ただ、修理をする過程でメモリにエラーが出ていまして。メモリも交換する形になると、別途5万円ほど修理費用がかかります。なので、一旦、MacBookをお返しした上で、エラーが頻発するようでしたら、再度修理をする形がよろしいかと思うのですが、いかがでしょう。」

「修理中にメモリにエラーが出た」という事象から、このまま使用した時にどのような不具合が発生する可能性があるかを尋ねると、何らか重い負荷がかかる処理を実行した際に、処理速度が遅くなったりフリーズしたりということが発生する懸念があるとのことだった。

最近MacBookで重い作業をする機会も減っている。特に問題が出なければ、余計なコストをかけずに済むかもしれない。そう考え「承知しました、ではその形でお願いします」と答えた。

すると、スタッフの方は「では、いつでもお客様のご都合のよろしいタイミングで、表参道店に受け取りにご来店いただければと思います。当店は20時閉店でして、本日はもうこの時間ですので、また明日以降でも構いません」と続けた。

わたしは礼を言って電話を切った。

 

 

翌日、Apple Storeに足を運ぶと、昨日対応してくれたのと同じ担当の方がわたしのMacBookを手に現れた。受け取ったMacを早速立ち上げ、キーボード・トラックパッドともに正常に反応することを確認する。

その場でいくつかのデータファイルを確認したところ、内部のデータについても損傷は指定なさそうだ。

「では、今回の修理対応は以上となります。もし使用される中でまた不具合などございましたら、ご連絡ください」

にこやかにそう言うその人に、礼を言って表参道店を後にした。

 

 

こうして、わたしのMacBookは修理を依頼した翌日には、無償で問題が解消されて手元に戻ってきた。修理完了は動かないことが判明して3日後である。なんという迅速な対応。

 

加えて、今回スタッフの方とやり取りする中で、こちらが何かを質問する前に、ディシジョンメイキングに必要な情報がスタッフから提供されたことも感動だった。

修理にかかる費用、オプションとしてどのような選択肢があるか。

その選択肢の中で最も妥当性が高く、コストが抑えられ、おすすめなものは何か。

「顧客の立場になって考える。」

そんな精神を体現したサービスを味わって、心底感動した。

 

 

大体、毎回こうだ。

こうしてAppleのスタッフに関わってサービスを受けるたびに、わたしはAppleを少しずつ好きになる。

もうWindowsには戻れないな、と改めて思った。