毎晩床について眠る前に、今日はどんなよいことがあったか、明日はどんなことをしようか、考えるようにしている。
とは言っても、そうそう毎日よいことが起こるわけでもない。何ひとつよいことがなかったように思える日でも、最低2つはよいことを思い返すようにしている。風呂に入ったら気持ちよかったとか、顎にできた吹き出物が小さくなったような気がしなくもない、とかそんなんでもいい。
昨日も眠る間に横になりながらいつものようにそんなことを考え、明日は掃除をしようと思った。住まいの乱れはこころの乱れ、という。住まいを整えれば、わたしもこころも多少はすっきりと片付くのではないか、なんて考えてみたりする。あと、ここのところサボってばかりいるし、できれば走ろうなどと思った眠りについた。
汚部屋という暗黒時代。そして暗黒時代を脱出したいまも、整理整頓ができない。
わたしは何かを使った後に元の場所に戻すっていうのができない。元の場所に戻す間に、次のことに着手して、そのままにしちゃう。恥ずかしながらそういう人である。
生ゴミとかは1週間に1回くらいだけれどちゃんと捨てるし、足の踏場がない、という状態になるほどではない。でも、女性の部屋としてはあるまじき状態になることは、過去に多々あった。
一人暮らしで、数ヶ月仕事で残業が続くタイミングなどは特にひどかった。
脱いだ服の山と洗濯が終わった服の山はそれぞれ崩れて合流し、朝はその中から服の匂いを嗅いで洗濯済みかどうかを選別して、服を選んで出かけていた時期もある。台所の排水溝の生ゴミが流れるのを防ぐ金網、あそこに引っかかったままのメロンの種から発芽してたこともある。(余談だが、その時付き合っていた彼氏は、その様子を見て絶句していたが、私にとってはそんなのは序の口なので「生命力ってすごいねー感動!」などと暢気なセリフをはいていた。)
社会人になってから大学時代の彼氏に合った時には「君のクローゼットは今でも扉を開くと雪崩が起きるのか?」と尋ねられたし、別の彼氏が家に尋ねてきた際に、わたしは散々掃除をして望んだのだが、飲み終わった缶ビールの空き缶やペットボトルがスーパーの袋3袋ほど脱衣所に隠してあるのがバレて「ゴミ屋敷」と言われた。(でも、一緒にゴミを出しに行ってくれるような鷹揚な人だったので、部屋を片付けるようにとは言われたものの、わたしの部屋の散らかりぶりで喧嘩になるようなことはなかった。その人とは全く別の理由で別れた。)
恥を恐れずに言うが、一番自分の部屋の衛生面の失墜を感じた時は、使用済みの生理用品からコバエが湧いたとき。当時は仕事がクソ忙しく、部屋に生ゴミ類などは一切なかったのに、なぜゴミ箱からコバエが湧くのか訝しく思って、よくよくゴミ袋を見てみたら、わたしの使用済み生理用品が入ってたのだった。ゴミ袋の口は軽くひねってクリップで抑えてあったんだけれど、密閉じゃないからね。中身を確認する為にゴミ袋を開いたら、おびただしい数のコバエが飛び出してきて、わー腐海みたい!と思った。あと経血って栄養豊富なんだね!とも思った。ドラッグストアでゼリー状の物体がプラスチックケースに入っているコバエホイホイみたいな商品を買って、部屋の数カ所に設置したら、1日でゼリー部分がコバエに埋め尽くされて真っ黒になったのを覚えている。
片付けられない病 回復の経過
でも徐々に、わたしの部屋は片付けられるようになっていった。空き缶のゴミを一緒に捨ててくれた彼氏の教育の影響が大きい。
- ゴミはこまめに捨てること。
- ものの定位置を決めること。定位置の決まっていないものを暫定的にしまう「ポイポイボックス」をつくること。
- 「ポイポイボックス」の中に放り込まれたものは2週間に1度確認して、必要に応じて捨てる/定位置を決めるの判断をすること
さすがに結婚して、夫と二人暮らしをしている今、ひどく部屋がちらかることはなくなった。
そのほか、洗濯物も溜め込まなくなったし、今は休職しているけれど、平日働いている時には週に2回くらいはクイックルワイパーをかけて、週に1度は掃除機をかける。
風呂は入るたび掃除、トイレも週1回だけど掃除。去年は断捨離もしたし、遊びに来る友人には「女の子の部屋にしてはものが少ない」と言われる。
衛生的にやばい状態ではないけれど、ものを片付けるのはやっぱり上手にできなくて、部屋が散らかり気味なのは相変わらずである。
部屋の乱れがこころの乱れだとするならば、以前のわたしに比べたら、わたしのこころはずいぶん整っていると言えると思う。
え、まじで。疑わしいんですけど。
埃をかぶって錆びついてる
夫と暮らし始めて5年半経つ。結婚してからは3年半。
最初の頃はもっと丁寧に掃除をしていた。家中ピカピカに。
鏡にくすみはなかったし、冷蔵庫の扉になんだかわからない液体が垂れ落ちたあとは付いていなかった。台所のシンクも使うたびにピカピカに磨いてた。
我が家は、台所仕事はわたしがやる代わりに、掃除機をかけるのは基本的に夫の役目なのだが、夫も四角い角を丸く掃くタイプなので、家具と家具の隙間には埃がたまっていたりする。
わたしが休職してからは、掃除もわたしがするようになった。重い腰をあげるまでは気が重いのだが、言ってもさして広くもない賃貸住宅である。夫と同じクオリティで一通り掃除機をかけるのならば、15分もあれば事足りる。
部屋の隅や家具の隙間に多少の埃が残っていたところで、誰かに非難されるわけじゃないし、日常生活で困ることがあるわけでもない。
(各家庭の日常的な掃除レベルってバラバラだと思うし、共働きかどうか、小さなお子さんがいるか、ルンバなどの文明の利器やアウトソース活用など、いろいろな条件によって変わると思うけれど、一般的にどのくらいまでしっかりと掃除をしているものなんだろう。)
適応障害で休職する前など、掃除をやる気も起きなかったので、最低限のことしかできていなかったのは事実。
でも、わたしたちの住まいは埃をかぶって、錆び付いてきているような気がするのだ。
で、今日は徹底的に掃除しようと思った。
徹底的にやる
普段ならばハンディモップで家具や建具の誇りを落とした後で掃除機をかけて、何か気になるこびりつき汚れのようなものがある箇所だけ、水拭きしたりする。
が、今日は家具もできる限り移動させて徹底的に掃除機をかけた。2度掃除機をかけて、夫だったら掃除機をかけないベッドと壁の間の隙間やベッド下の収納の上まで徹底的に誇りをとる。
その上で、ひたすら雑巾掛け。雑巾はあっという間に埃と塵で濃い灰色になった。
床に配津配って、雑巾を掴んだ腕を右に左に動かし続けると、じんわりと汗が滲んでくる。もっときれいにしたい、もっときれいにできるはず、とテンションが上がってくるのが自分でもわかる。ランナーズ・ハイ的な。掃除だからクリーンアップ・ハイ?クリーナーズ・ハイか?
その気分の昂まりに乗じて、冷蔵庫の扉も、ガスレンジ周りも、洗面所の鏡も磨いた。風呂場のかべも床も洗剤をつけてブラシとスポンジで力一杯こする。そして台所のシンクから跳ねた水がつたい落ちた跡がこびりついているシンク下も雑巾で一掃。シンク周りもぴっかぴかに磨き上げた。要らないのになぜか捨てずに残してあったジャムか何かの瓶は捨てた。
ダスターで埃を落とし始めたところから、気づいたら3時間が過ぎていた。
うちの台所は北側に面しているから決して明るくはないけれど、窓を開け放つと気持ちのいい風が吹き込んでくる。
その風を浴びながら、グラスに水を注いで磨き上げられた台所を眺めて飲んだら、ものすごく美味しかった。
雑巾がけでじんわりかいた汗が妙な達成感を誘う。
ソファーに身を委ねたらふっと睡魔が降りてきて、そのまま吸い込まれるように眠った。
ということで、掃除はしたんだけどさー、走るのは今日もサボっちゃったよ。