365日の顛末

こころとからだの健康、不妊治療、キャリア。試行錯誤の365日の記録。

【不妊治療ログ】自己注射指導@リプロと先端恐怖症のはなし

先日、リプロダクションクリニック東京(以下リプロ)に転院を決めました。

 

リプロは、自己注射の際に皮下注ペンなどではなく、

クリニックで使用しているような医療用注射針・注射器とアンプルなどを使います。

 

梅ヶ丘産婦人科病院に通院していた頃に、ゴナールF皮下注ペンは使用していたのですが、

それとは全く勝手が違うということで、自己注射指導を受けてきました。

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 自己注射指導@リプロ

事前に予約が必要

診察の予約をアプリで行うのですが、自己注射指導も同様にアプリで予約します。

通常の診察とは別の「自己注射参加専用」の枠があり、

毎日開催していますが、時間帯は15〜16時のみ。

数名でまとめて受講する形で、15分前に受付を済ませるようにと言われました。

 

平日だと翌日の枠も空きがあったりします。

週末の枠はやっぱり早く埋まってしまうようですね。

 

注射訓練のためだけに来院するのも面倒なので、

前回の通院時に受けた採血結果の確認目的の再診も合わせて、

自己注射指導→再診という順番で平日に予約しました。

 

大きな金額ではないんのですが、祝祭日だと受信料が加算されることに加え、

オフィスがクリニックの近隣なので、時間効率を考えて、

当日は出社して、仕事を中抜けして受診する形を取りました。

 

当日までの準備:予習必須

事前に自己注射についての説明動画、説明書きWebページのURLを教えてもらえます。

指導の前に必ず予習してくるように、と案内されました。

動画は10分ほどの内容で、注射に使う器具やアイテムの名前、

注射する薬剤を作る(溶剤に粉末を溶かす必要がある)ところから

注射するまでの一連の流れを説明したものです。

 

さらっと見てから参加しました。

 

当日の流れ

指導開始の15分前に受付を済ませ、待合室で自分の診察券番号が画面に表示されるまで待ちます。

ほぼ15時ぴったりに案内されました。

 

 

余談ですが、クリニックによって、通院されている方の雰囲気の傾向ってあるなぁと思います。

 

(ここから、ちょっと偏見というか、わたしの色眼鏡で見た景色の話ですが)

人間観察がすきなので、人が多いところで何かを待つ時間があると、

わたしはこっそり周囲の人を観察する癖があります。。

直近で通っていたKLCは、わりとPCを持ち込んで待合室で仕事をされている方も多く、

そうでなくても仕事用と思しき大きめの鞄を持って通院されている方が多い印象でした。

一方でリプロは、安直な表現ですが「エレガント」な雰囲気の方が多い気がします。

手持ちの鞄はミニバック、服装もコンサバなオフィスファッションというよりは、

シフォンのロング丈のプリーツスカートとか、春色の花柄とろみワンピースとか。

 

先週末に通院したときも、何だか女性らしくい服装の方が多くて、

「週末だし、みんな帰り道に銀座で買い物とかするのかな。おっとなー!」などと

思っていたんですが、平日も変わらずエレガントでした。

 

わたしもコンサバな服装で仕事する日ばかりではないのですが、

普段わたしが着ているような、体のラインが目立たないシルエットのカジュアル寄りの服ではなく、

女性らしいカーブラインのフェミニンなファッションの方が多いかんじ。

何というか待合室の雰囲気・天井の高さと相まって、

「何すかね、ここ、なんかのサロンなんかな。

 もしかして、この後ティーパーティーとか始まっちゃうんかな。」って感じだった。

 

鼻の頭に汗をかきながらオフィスを抜け出し、メイクも直さずクリニックの受付を済ませ、

脇汗かきながらPC開いて仕事してましたが、そんなガサツな雰囲気なのはわたしくらいのもので、

なんつーか皆さん綺麗でで落ち着いていて、「大人だなぁ」と思いました。

(あれれ、年齢的にはわたしも十分に大人なはずなんだけどな、まいっか。

 

いざ受講

わたしの参加時は、わたし含めて5名の通院者に対して、説明するスタッフさんが1名、

補助の方が1名という形でした。

クリニック側で、自己注射の説明書き、使用する機器や薬剤、

自己注射に関する同意書を用意されていて、スタッフの方が実演しながら説明し、

それを真似して自分たちでも作業してみる、という流れでした。

わたしは手先はわりと器用なのですが(編み物や絡まった糸を解くとか好物)、

 

実は先端恐怖症なのです。

引かれる覚悟で書きますが、注射器に限らず裁縫針などの鋭角的な先端を見ていると

「ギャー」と叫びたくなったり、自分に突き刺したい衝動に駆られるんです。

特にイライラしている時などはその衝動を抑えるのが大変で、

叫び出さないように深呼吸しながら意識を集中して理性を働かせていないと、

テーブルなどをひっくり返したい衝動に駆られます。。

 

今回は、溶媒に薬剤を混ぜて、注射器を使って薬剤を作る方法と、

自分に刺す注射針に変えた後、刺す直前までの実習でした。

採卵時に診察を受けた際に、刺すステップの指導を受ける形だそうです。

 

そんなこんなで、針を手にして変な冷や汗をかきましたが、

今回はなんとか無事終了しました。

 

 

自己注射指導の後、一旦オフィスに戻って仕事をして、

それから再診を受けたのですが、その話はまた後日に改めて。

 

 

先端恐怖症について

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先ほど触れたとおり、わたしは先端に弱い。
特に、金属で、その中でも銀色に光っている先端には滅法弱い。


コンビニの陳列棚の角っこなんかを見ているだけで動悸が早まって、苛々してしまう。
そして、わたしを苛つかせた先端に額をあてると、何故か動悸がおさまったりする。

 

学生時代にミュージカルサークルの衣装デザイン制作を担当した時期があるのだが、

針を手にして作業している時など、ふいに眉間に突き刺したい衝動にかられていた。

針先を寝かせて眉間のあたりに当てながら深呼吸をすると、妙に心が安らいだりした。

 

 

幼い頃からそうだった。

 

母に手を引かれて買い物に行ったスーパーで、ひっそりと陳列棚の金属部の角に

頭を押し付けている姿を母に目撃され、不意に「●●ちゃん何してるの」と

声をかけられたときには、心臓がとまるかと思った。

幼心にも、自分のその感覚がマイノリティーに属すことはわかっていたので、

正直に話してしまうと母を悲しませるんじゃないかと心配して、

必至で取り繕った記憶がある。

 

 

自分に余裕がないときには、金属製のものに限定せずとも

鋭角的な「なにか」が、自分の眉間から半径数十センチメートルの視界に

入ってくること自体が厭でたまらない。

 

鉛筆なんかはもちろん、ときには紙にすら嫌悪感を覚える。

例えばパイプ椅子を並べた会場で受ける説明会とか、あるじゃないですか。

隣に座った人が手に持っているA4資料の角、あれが嫌だ。

何でもっと低い位置で持ってくれないのか。

近眼で、顔に近づけなきゃ読めないようならメガネかけろよって思う。(←自分勝手

 

 

この感覚に共感を得られることは滅多にないのだけれど、

それでもまれにわかってくれる人がいて、過去に同じ感覚を持つ人から

「眉間でなくても頭とか、特に髪の分け目を先端に押し当てるのが効くよ」

とアドバイスされたことがある。

言われた通りに試してみたら、確かに頭の髪の分け目のあたりでも、心が鎮まった。

 

 

これから始まる採卵期、毎日この衝動と闘いながら注射するのかと思うと、

やっぱりちょっと気が重い。

 

突然の着信に焦って奇声をあげたりすることがないように、

スマホのない部屋で、すきな曲でも聴きながら深呼吸して、静かに打とうと思う。

【不妊治療ログ】リプロ東京初診と転院検討:9周期にむけて(2021年3月:41歳2ヶ月)

以前から、不妊治療で現在通院している加藤レディスクリニック(以下KLC)から、リプロダクションクリニック東京(以下リプロ)への転院を検討しようかと思っていましたが、

具体検討のために先日リプロの初診を受けました。

 

 

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リプロダクションクリニックについて、転院検討の理由

東京(新橋)と大阪(日本橋)にある不妊治療専門クリニックです。

不妊治療のあれこれについてWeb検索した際にリプロ東京の公式blogがヒットすることも多く、そういった意味では以前からお世話になっていました。

(医学的な情報に関しては、クリニックが責任もって発信している情報 or

 根拠としている参照論文が記載されている情報 以外は、

 気にしすぎないように努めています。クリニックの口コミはまた別です。)

 

また、個人のBlogやSNSなどでの先人の不妊治療戦士のクチコミを見ていると、

KLCで胚盤胞ができずに、リプロへ転院して胚盤胞を得た方を

多く見かけるように感じています。

Twitterでは、30台前半の方はさほどフォローしておらず、

比較的年齢の近い30代後半〜40代の方をメインでフォローしているので、

かなり情報バイアスがかかっている自覚はあるのですが、

特に年齢層が高めの方や着床窓ずれなどの事情がある方は、

他院で期待する結果を得られずにリプロでうまくいっているケースが目につきます。

 

 

KLCは自然周期・低刺激法での採卵を強く推奨する方針をとっていますが、

採卵数が減ってきているわたしには結構きついというのが実感です。

加えて、これまでの通院経過から

  •  DHEAサプリについての問答
  • その他採卵数や胚盤胞発生率を上げるためにできることがないかを聞いても、「年齢が高いからそんなものです」との回答が続き、医師からは何の示唆も得られないこと
  • 男性不妊に関するフォローが皆無

などを踏まえて、リプロ転院を検討することにしました。

 

 ↓ KLCでDEHAやEMMA/ERA/ALICEについて質問した際に医師から説明された

     KLCの診療方針については、以下の記事に詳細を記載しています。

 

誤解しないでいただきたいのですが、KLCの方針を批判しているわけではないです。

採卵数の多い方、若い方は、KLC方針で試すという選択も有効だと思います。

(35歳以下ならばKLCの大きな特徴のひとつである

 成功報酬制のお得な料金プランも選択できますしね)

 

わたし個人の事情を離れた一般論としては、

医療に限らず、一定水準のサービスを出来るだけ低コストで提供しようとすれば、

個々のケースでのカスタマイズせずを最小限に抑えて、

同じプロセスでオペレーションした方が効率的なのは言うまでもないですし、

そういう形で培養技術の評判が高いKLCが治療コストを抑えているのは、

不妊治療の検討層全体に対して、とても意味があることだと思っています。 

 

一方、わたしはさほど時間に猶予がないので、

院内で確立された手法から外れた「個々人に合わせたアプローチ」が

期待できないクリニックは不向きだと判断した次第です。

 

 

 

初診までの流れ

初診申し込みのステップは、以下のような形でした。

  1. 初診申し込みのための問診票に記入して、リプロに送付する
  2. リプロに電話して初診予約する
  3. 過去の検査結果のコピーを用意して初診に備える

 

1. 初診申し込みのための問診票に記入して、リプロに送付する

初診を申し込むにあたって、事前に問診票に記入する必要があります。

リプロのWebサイトから問診票をDLして記入します。

わたしはメール送付用のExcelフォーマットに記入しましたが、

郵送用のpdfのものもありました。

 

記入済の問診票と合わせて、保険証の画像(郵送ならコピー)を合わせて送付します。

 

2. リプロに電話して初診予約する

①の問診票を送付した後に、電話で予約を入れます。

郵送の場合は定かではないのですが、問診票の確認に

1営業日のタイムラグがあるらしいので、翌日に電話するとよいと思います。

わたしは送付後すぐに電話してしまったため、問診票を受付で確認できていないらしく

「明日改めて予約の電話をしてください」と案内されました。

 

ちなみに、業務を調整する都合もあって、初診申込の電話から平均何日後の枠から

予約できるのか質問したところ、平均2,3営業日後と回答いただきました。

最初に通ったクリニックは予約から1ヶ月待ちだったので、早さにびっくり。

実際にわたしが予約した時も、最短で電話の3日後から予約できました。

 

3. 過去の検査結果のコピーを用意して初診に備える

電話で予約した際に、初診時に過去の検査結果のコピーを

持参するようにと言われました。

別の院で受けた検査結果を、夫のもの、妻のものを分けてコピーしておきます。

 

その他

当初は紹介状や治療履歴のようなものの作成をKLCの医師に依頼するか迷いましたが、

事前に送付した問診票の項目が細かかったので、用意しませんでした。

並行してKLCでも治療進行中なので、迷っている段階であえて

転院を仄めかさなくても良いかなと思ったのと、

紹介状作成料などのコスト削減も理由のひとつです。

 

 

いざ初診

初診当日は受付 → 内診 → 問診 → 採血 →会計 という流れでした。

 

汐留シティセンター内にある院内は、天井が高くて、窓も多く明るい雰囲気。

2階と3階の一部がリプロのフロアですが、

6フロアにまたがっているKLCよりはこじんまりとした印象でした。

待合スペースにデスク席は少ないので、がっつり仕事しながら順番待ちするのは

難しいかもしれないです。

(KLCでも結局はソファー席で膝の上にPC置いて作業してましたけど)

 

受付

診察券を受け取り、過去の検査結果のコピーを手渡し、

次回以降の再診際の受付方法、予約方法、待合室利用や呼び出しについての

説明を受けます。

その後、待合室で自分の番号が呼び出されるのを待ちます。

 

内診

担当は男性医師でした。

「子宮筋腫がありますねー、これまでに言われたことありますか?」と医師。

わたし「はい、いくつもあるって聞いています」

 医  師 「大きいのは34mmくらいありますね。同じくらいの大きさの他にもあるな」

 医  師 「チョコレート嚢胞って言われたことはありますか?」

わたし「いえ、一度も。初めて言われました」

というやりとりがありました。

 

内診の際に、診察台が上がるまで医師との間をさえぎるカーテンを

引いてもらえない点が少し気になったのと

(慣れつつありましたが、その後問診で顔を合わせるにしても、

 これから脚を開く部屋で男性医師と顔合わせるのって少し抵抗ありませんか?)、

隣り合わせの問診の声が内診しつに丸聞こえなのは気になりました。

(壁はあるのですが、天井近くでつながっている構造でした)

誰がどの部屋に入ったかなんていちいち気にしないので問題ないと思いますが、

問診室で話す内容ってかなりプライバシーに抵触する話だと思うので。

 

内診後は問診を待ちます。

 

問診

KLCと同様、リプロも担当医制ではなく、毎回担当医師が変更になるスタイルです。

今回は40代と思しき女性の医師が担当してくださいました。

 

問診票に記入した内容や、飲んでいるサプリ、過去の診察履歴などを確認されました。

問診票は、前回採卵の2/28の前に記入していたので、

2/28にも採卵していることを伝えました。

 

(リプロ転院理由として)加藤さんのやり方だと採卵数が2個だから、

 もう少し採卵数を増やしていきたいということですね」と医師。

そういう患者さんが多いんですかね、察しがいいです。

 

良好な卵子を作るための栄養素で何か不足しているものがないかと合わせて、

 着床する際にボトルネックとなる点があるかを確認する検査オプションもあるので

 今後は診察を進めながら、この辺りの検査も検討していきましょう」と医師。

子宮収縮検査(エコー動画検査)は排卵後1週間ほど後に、

慢性子宮内膜炎検査(B-CE検査)は採卵日に行うことができるそうです。

 

慢性子宮内膜検査については、KLCではこちらから ERA,EMMA,ALICE検査について

質問して渡された資料に掲載されていただけだったので、

先々を見据えてとりうる治療や、受けるべき検査のマイルストーンを前もって教えて頂けるのは

非常にありがたく安心しました。

 

その他、採血結果が1週間後に出るので、結果確認を兼ねた再診予約と、

自己注射の説明会の予約をしてください、と案内されました。

これまでに皮下注ペンでの自己注射は経験がありますが、

プロの自己注射はではなくアンプル&注射針を使う本格タイプ。

先端恐怖症なので、やや不安です。。

 

採血

試験管6,7本分、採血しました。

血液内の銅・亜鉛などの含有量も検査するとのこと。

検査項目はKLCよりも細かそうです。

 

会計の前に。チョコレート嚢胞について

ここからはちょっと余談です。 

内診の際に尋ねられたチョコレート嚢胞については、問診で特に触れられず。。

知人にチョコレート嚢胞の方もいますし、病名はこれまでにも耳にしていましたが、

具体的にどんな症状・影響のある病気か理解できていなかったので、

内診後にスマホで調べました。

 

チョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症性嚢胞)は、本来、子宮の内側にあるはずの子宮内膜が、卵巣に発生することで起きる子宮内膜症の一つです。

(中略)

子宮内膜症患者の30~50%が不妊症になるとされ、妊娠を望む場合は大きな問題となります。

(中略)

悪性腫瘍の可能性がある場合は、MRIやCT、腫瘍マーカーなどの検査を行います。

チョコレート嚢胞(卵巣子宮内膜症性嚢胞)とは(症状・原因・治療など)|ドクターズ・ファイル:慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 教授 青木 大輔 先生 より

これを見たときには正直、血の気がひきました。

情報にたどり着くまではドキドキして冷や汗をかいていたのですが、

不妊治療に大きな影響がありそうなことを読んで知った後はむしろ諦観が強くなって、

「いよいよ、この後の人生を夫とふたり、どのように楽しく過ごすかを

 考える方向に振る判断をしないといけないかもな」とか

「チョコレート嚢胞だった場合に、夫や両親にそのことを

どのように伝えればよいか」などと考えたりしていました。 

 

 

今回は初診で、診察の流れを把握できていなかったため、

採血後に再度問診があるのかな、と思っていたのですが、

採血の後に会計へと案内されてようやく、

今日の問診はさっきの1回で終了だったことに気付きまして。

 

「チョコレート嚢胞について」、わたしはその疑いがあるのか、

確実に該当する/しないのか、1週間もモヤモヤを抱えて過ごすのは嫌だなと思い、

受付に確認したところ、先生がもう一度問診してくれることに。

結果的に「内診の段階では2/28採卵を把握していなかったために、

内診医師がチョコレート嚢胞の可能性を疑ったんだと思う。

採卵後であれば子宮の腫れ・出血があるのは当然なので問題ない」とのこと。

ほっと胸を撫で下ろしました。

 

本日のお会計

保険内: 2,600円

 自  費:34,045円

-------------------------

 合   計:36,645円

-------------------------

 累   計:2,289,356円

 

 

転院検討について

 

血液検査の項目が多いようなので妥当なのかもしれませんが、

KLC の初診が18,000円弱だったのに対して、

若干割高な印象ですかね。

 

とはいえ、全体として初診の満足度はとても高かったです。

少なくとも、患者さんに合わせて治療をカスタマイズしようとする方針は

リプロの方が数歩リードしていると感じました。

実際のところ、少し割安だったとしても妊娠につながらなければ

投資に対する回収はゼロ、意味がないわけですから、

今はかなり転院に気持ちが傾いています。

 

リプロは他院に比べると費用が高額だという話もよく耳にしますが、

料金表もいただいたのでKLCと比較しつつ転院を具体検討しようと思います。

 

費用や料金体型についてのKLCとリプロの比較も、今後記事にしていきますので、

興味がある方はご期待ください。

 

 

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【不妊治療ログ】8周期目 採卵周期D11診察・D13採卵(2021年2月:41歳1ヶ月)

2/26はD11の診察、そしてその二日後の2/28に5回目の採卵をしてきました。

結論からいうと、今回の採卵数は2つ、

そして夫の運動率が改善していました!!

 

 

2/26 D11:診察

いつものように業務の合間をぬっての通院です。

16:30に予約していて、時間より少し前に到着しました。

いつものように10階の検査センターで採血を終わらせた後、

5階に移動して内診・診察です。

 

内診結果

左側の卵胞は16mm、13mmのふたつ、右側は18mm、16mmということでした。

そして医師から「右は二重卵胞になっちゃってますねぇ」と言われました。

 

わたしは「二重卵胞」というものを初めて知ったのですが、

医師の説明によると、「卵胞の中に卵胞が入ってしまっている状態」とのこと。

エコーの画面を見ると、たしかに18mmの大きな卵胞と

16mmの小さい卵胞が重なってしまっているようです。

 

 

「美容目的でプラセンタ飲んでたりすると二重卵胞ができたりするんだけれど、

 飲んでますか?」と質問されましたが、一度も飲んだことはありません。

 

診察

内診してくれた医師との診察で、改めて二重卵胞について説明を受けました。

なんでも、採卵のタイミングで育っていた古い卵胞がそのまま残ってしまった場合に

二重卵胞ができることが多いのだそうです。

「処方したピルは飲んでいますか?もしピルを飲んでいて二重卵胞ができたのならば

 次の周期からはピルの量を多くした方がよいかもしれないですね」とのこと。


実は、今周期は採卵後に処方されたピルを飲み忘れた日が1日あったんです。

それを正直に伝えると、「おそらく、そのせいでしょう。」と言われました。

1日1回ピルを飲むことで、卵巣を休ませるようにホルモンを調整しているわけで、

1日飲み忘れるとピル服薬まで48時間のブランクができることになります。

このブランクでも、卵胞が育ってしまうのだそうです。

飲み忘れるとは、しくじった。。

もし夜に服薬するピルの飲み忘れに気づいた場合には、

翌朝すぐに飲んだ方がよいとのことでした。

 

そして、二重卵胞の場合は、採卵しても空砲や変性卵である可能性が高いのだそう。

前回も少し触れましたが、リプロ東京への転院も並行して検討しているので、

今回は採卵を見送ろうかなという考えも頭をよぎりました。

 

「二重卵胞の場合、空砲や変性卵の可能性がどのくらい高まるんですか?」と

質問してみたのですが、

「それは個人差もあるので、なんとも。採卵してみないとわからないんですよね。」

ただホルモン値も正常に上がっているとのことで、2日後に採卵することにしました。

 

採血検査結果

E2:1186 pg/mL

LH: 7.2 mIU/mL

P4:   0.2 ng/mL

 

採卵に向けて 

医師との問診の後、採卵に向けての薬剤投与などの説明を受けます。

2/26の夜23時に点鼻薬、

2/27の18時と24時に排卵抑制目的のボルタレン座薬、

そして2/27の15時すぎに電話をして、採卵当日の来院時間を確認するように、

と指示を受けました。

 

ちなみに、点鼻薬は前のクリニックで処方されたものを使っていたのですが、

加藤レディスクリニック では、点鼻薬の期限を処方から半年間に設定しているらしく、

今回は新しく点鼻薬を処方されました。

 

本日のお会計

採卵後にまとめて請求ということで、

この日はお会計なしでした。

 

ここからは余談ですが、「今日の担当してくれた先生は説明も分かりやすいし、

コミュニケーションしやすいな」と感じたのですが、

診療部長も務められている先生でした。妙に納得。。

 

採卵前日

現在、中古マンションの購入を検討していることもあって、

この日は内見のために午後は一日中外出して、歩き回っていました。


18時に帰宅する頃にはヘトヘト。

ボルタレンの投薬のために24時まで起きている必要があるんですが、

「眠っちゃダメだ」と思っても、気づけばまぶたが閉じてしまっているくらいに

眠かったです。

 

 

2/28 D13:顕微採卵

夫と一緒にクリニックに向かいます。

(クリニックの方針としては、コロナ対策の観点から、

 当日朝に自宅で採精し持ち込むことを推奨しているのですが、

 うちは運動率が低いので、質の良い精子を確保する目的で院内採精の許可をもらっています)

 

タイムライン

当日のタイムラインはこんな感じでした。

8:50 受付

9:25 採卵フロアへ移動

9:35 着替え終わり、個室スペースで待機

10:05 採卵室の前で待機

10:10 採卵

10:18 採卵終わり、個室スペースで安静

10:25 採卵数2個と伝えられる

10:35 止血ガーゼを取り出し、着替えて9階の待機フロアへ

11:10 夫と合流

11:30 培養士との面談

11:45 医師との診察

 

採卵

どうかいい卵でありますように!今度こそ胚盤胞になってくれますように!

あなたたちが大きくなってお腹の中に戻ってくるのを待ってるからねー!

という気持ちで挑みました。

今回は4回針を刺したのですが、前回ほどの痛みはなくスムーズで、

採卵後の出血も3回の中では一番少なかったように思います。

 

培養士との面談

今回は2つ採卵できました。

二重卵胞のもの混ざっているということだったので、どれが採卵できたのか確認しましたが、

右の18mmの主席卵胞と、左の16mmが成熟卵で、残り2つは空砲だったとのこと。

ピルの飲み忘れもあったので、ひょっとしたらひとつも採卵できない可能性も

あるかもしれないと思ったので、ほっと胸をなで下ろしました。

 

そして、今回何よりうれしかったのは、精検の結果。

わずかながら運動率が改善してました!

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とはいえ、WHOのガイドラインの基準値は40%なのに対して、4%ではありますが、

それでも、ここ半年ほど1%が続いていたので、この一歩は大きい!

 

1年前には運動率が14%だったのに、そこから数値は下落の一途を辿っていて、

ここ数回は「生きているのは数匹しかいないので、%では出せない」と

言われることもありました。

前のクリニックでは男性外来にも通いましたが、運動率の低下の原因は特定できず、

わたしが採卵できなくなる前に、夫要因で不妊治療が終了する可能性もあるのかな、と

正直考えたこともありました。

この数値の改善は夫も喜んでいて、その姿を見てわたしもうれしくなりました。

 

運動率改善の要因は?

で、気になるのが、何が数値改善につながったのかという点。

夫とも話したのですが、運動不足の解消なのかな、と推測しています。

 

そもそも最初の精検で運動率が低かったので、それ以降、夫は飲酒量を減らしました。

その後も数値はずっと低下していたのですが、生活の変化として考えられることは

コロナで在宅勤務になったために、運動量が下がったことくらい。

以前は、毎日の通勤や打ち合わせのための移動だけでも1日に10,000歩くらいは

歩くことが多いので、それがなくなった影響は少なくないと思っています。

そして、年明けにRing Fitを買ったことも手伝って、インドア派の夫も

週に数回は汗をかく程度の運動を続けるようになりました。

 

ここ数ヶ月での生活での変化はそれくらいしか思い当たらないため

運動不足解消が功を奏したのかなと考えています。

ただ、濃度は前回の42M/mlから大幅に減っているんですよね。

実際、運動している数自体はあまり変わっていないのかも。。 

 

本日のお会計

D4、D11の診察分・処方薬の代金、採卵を合わせての会計です。

消耗品費用: 40,000円

体外受精 :187,000円

外来診療費: 6,710円

-------------------------

合計   :233,710円

-------------------------

 累計     :2,252,711円

 

3/1:受精確認連絡

採卵の翌日14時は、受精結果の確認です。

クリニックからメールが届くので、Webでパスワードを入れて確認します。

祈るような気持ちでページを開くと…

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無事2つとも正常受精していました。

 

次は3/7に受精卵の生育過程と凍結確認のメールが届きます。

今度こそ胚盤胞に育ってほしい。

 

 

転院にむけた動き

低刺激だと注射もないですし、黄体ホルモン剤の服用(眠くなります)もないので、

以前経験したことのあるPPOS法よりは肉体的・精神的負担は軽くなったように

感じています。

 

一方で、わたしの場合は低刺激法だと1回の採卵数は2個が限界のよう。

なので、別の刺激法にもう一度トライしてみてもいいんじゃないかと思い、

リプロ東京の初診予約を入れてみました。

 

初診の際にERA、EMMA、ALICE検査の費用なども伺った上で、

転院するかどうかを考えてみたいと思っています。

 

 

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同じ舟の上で(flexlifeのwarに寄せて)

わたしの暮らす部屋のお隣りさんはご夫婦で、
小さな赤ちゃんが1人いる。


三ヶ月前、カステラを手に下げて引越の挨拶をしに行った際
玄関先に出て来たのは旦那さんだった。
何か困ったことがあれば言ってください、と言うその人を見て、
なんだ、東京砂漠も捨てたもんじゃないな、と思った。


その後、マンションの階段で、あるいは廊下で、
まだ生まれたばかりの赤ちゃんを連れた
お隣り夫婦と何度かすれ違った。

柔らかい布に包まれて抱えられたまま、
気まぐれに手足をばたつかせる赤ちゃんに
わたしの人差し指を預けてみると、
そのちんまりした手からは想像がつかないような力で
ぎゅうと握り返された。
それをほほえましく見ているご夫婦の様子を見て、
ほう、なるほど、これが小さくも暖かい幸せってやつなのか、
などと思った。

赤ちゃんが手を握り締めているのは、
絶対に離してはいけない幸せの種を
小さな掌に握っているからなの。

小さい頃、どこかで誰かにそんな話を聞いたことを思い出した。


夜中に毛布にくるまって小説を読んでいると時々、
壁の向こうから赤ちゃんが泣き出す声が聞こえる。
その後に必ず続くばたばたとした生活音で、
わたしはあのちんまりした掌と
それを見つめる二人の眼差しを思い出す。

読み途中の小説がどんなに残酷な、うら寂しい情景を描いていても、
その声や物音を耳にする度、小さな幸せの形を思い出して、
心の奥のほうからじんわりと暖かいものが沸くような気がした。


ここ最近、赤ん坊の泣き声と
夜中のバタバタとした生活音の順序が逆転した。
最初に話し声が聞こえ次第にその語調が強まり、
赤ん坊の泣き声へと繋がるのだった。
共同生活に口論は付き物だし、まあそういうこともあろう、
幸せを守るやり方や折り合いの付け方を
二人でがんばって模索してくれ、などと
小説のページをくりながら思っていたが、
そんな物音が聞こえる夜が頻繁になるにつれて、
わたしは夜の時間が息苦しく感じられるようになり、
毛布を頭からすっぽりと被るのだった。


わたしの人差し指を包んだあの小さな掌をぎゅうと握りしめて、
体中の声を振り絞って緊急事態を知らせようとする
小さな姿が脳裏に浮かぶ。

知らない大人の世界の事情で、
自分を守ってくれる囲いは簡単に吹き飛んでしまうのだな、
そして今のわたしはまだまだ小さくて、
その壊れていく過程をただ眺めているしかないのだな、
そう痛感したいつかの自分を思い出す。
今日の自分を守ってくれるものが
明日も同じ形で存在するなんてことは
本当に奇跡のようなものであって、
だからといって泣いてる場合なんかでは決してなくて、
ひとまず自分のことは自分で守れるくらいに
タフになんなきゃだめなんだわ、と心底思った日のこと。

赤ん坊の泣き声に当時の自分の姿を見た気がした。

 

一週間ちょっと前から赤ん坊の声を含め、
夜中の刺々しい騒音はぴたりと止んで、
おぉ、一段落して落ち着いたか、めでたいことだ、
などと思った矢先の出来事だった。

今日、近所のスーパーから戻ってきた途中、
マンションの階段でお隣の旦那さんとすれ違った。
彼が手に提げた半透明のゴミ袋には、
カップラーメンだかコンビニのお弁当だかの
発泡スチロールの容器がいっぱいに詰まっていて、
ああ、わたしの楽観的な推測は空しく外れて、
そういうことになっているのね、と思う。

見てはいけないものを見てしまった気分で
きまり悪そうに、力なく笑うその人と、
こんにちは、のような挨拶を交わした。

 

1週間分の洗濯物を片付け、部屋の掃除をしてゴミを出し、
この先1週間の夕飯を作った後、ベランダにて音楽を聴く。


 割れたガラスでできた 広い海原
 牙を剥いた荒波 小さな方舟
 舟の西にパパがいて 東にママがいて
 綱引きしてる 同じ舟の上で why?

 いつも強引な身勝手なパパと
 ヒステリックな声でわめいているママと
 遠い昔抱きしめ合ったはずなのに
 今は深い憎しみ抱きしめ 生きてる 争ってる why?
 
 沈みかけた小舟 大きな黒雲
 小刻みに揺られて 少しずつ歪んで
 寄せて返す疑いと 遠のいてく未来と
 綱引きしてる 同じ舟の上で why?
 
 かなり凶暴な夢見てるママと 
 この舟の上じゃNo.1なんて言うパパと
 遠い昔 愛し合ったはずなのに
 泥試合の争いじゃ 舟は千切れて なくなるだけ why?

 愛なんてと背を向け プライドだけ守っても
 愛なんてと言わないで 遠くまで見つめて
 舟の西にパパがいて 東にママがいて
 綱引きしてる 同じ舟の上で why?


部屋のステレオから流れてくる、flex lifeが唄うwarを聞きながら、
プルタブを引いたハイネケンをぐびりと飲みながら、
ママと一緒にどこかへ行ってしまった赤ちゃんのために、
20年前のその日に泣いちゃだめだと思った自分のために、
少しだけ、泣いた。

そんな土曜の午後3時。

 


子どもはいつだって選択肢を与えてもらえない。

 

 

 

 


flexlife / WAR - at Tatomiya

 

上記の文章は2007年当時に「はてなブログ」ではないBlog的な媒体に掲載してた

過去の日記からの抜粋。

最近、改めてflexlifeを聴きかえす機会があって、

この曲に関連した日記を27歳のわたしが書いていたのを思い出し、読み返した。

 

この雑文を書きつけた日から14年近くが経つ。

幼い頃に両親が不仲だった期間を長く過ごしたわたしにとって、

20代の頃はこの曲の浸透圧が高すぎて、ヒリヒリとした痛みを覚えるほどだった。

 

聞けば悲しい場面がフラッシュバックすることも多かったのに、

聴き終わった後には少し癒されたような感覚もあって、

繰り返して何度も聞いていた。聴くと何故か清々しい気持ちになった。

 

青春の残り香をひっさげていた大学時代のわたしは

「この曲って、わたしにとってはリストカット的な代償行為なのかも」

などと思ったりしてた。

リストカットという表現はやや厨二病的かもしれないけれど、

忘れがたい痛みへのレクイエムというか、自分に聞かせる子守唄的な役割を

この曲が果たしてくれていたように思う。

 

 

同じ景色を脳裏に描いても当時のような切迫した痛みを覚えなくなったのは、

わたし自身のものを見るフィルターが更新されたからか、時間経過による漂白効果か。

もしくは、守られる存在ではなく、何かを守るべき年齢に達したからなのか。

 

いずれにせよ、わたしは新しい舟を夫と一緒に漕ぎながら、

なんとか今日も海原に浮いている。

不妊・不妊治療に関する誤謬とメディアの功罪(with onlineの不妊関連記事に寄せて )

先日、Twitter上で、With Onlineの以下の記事が話題になっていました。

 

withonline.jp

 

わたしも内容を拝見したのですが、正直、違和感を拭えませんでした。

昨今の不妊関連の情報に関するメディア発信の仕方と、

今回覚えた違和感は、根本で似た部分もあるように感じたので、

それについて書きたいと思います。

 

 

With Onlineに掲載された「不妊治療」に関する記事の概要

記事の概要はこんな感じです。

  • アナウンサーであるインタビュイーが結婚から3ヶ月後、妊活を始めようと産婦人科を訪れたところ、多嚢胞性卵巣症候群であることが判明
  • 排卵誘発剤を用いてのタイミング法、人工授精では妊娠には至らず、産婦人科受信から8ヶ月目に気分転換に旅行に出かけたところ、自然妊娠が発覚
  • 「子供って奇跡の存在。すぐ妊娠する人もいれば、原因があってできない人、原因が分からずできない人と、様々にいます。」と所感を語る

 

わたしも、最初にTwitterでこの記事に対する批判を目にしたときには、

「すんなりと授かれた方への嫉妬心が混じった批判かな」などと

やや懐疑的な目で眺めていました。

ただ、実際に記事を読み進めるうちに、不妊治療の当事者として、

心に引っかかる部分を感じました。

 

 

違和感を抱かせる最大要因:取材対象の方は不妊症の定義に該当しない 

記事の中では、取材対象者が子どもを授かるまでの

タイムラインが掲載されているのですが、

2016年10月にご結婚され、2017年1月に妊活をスタートし、

2017年8月に妊娠が判明されたと記載されています。

 

以下はWith Online内の記事から拝借した画像です。

f:id:sophy365:20210301163544j:plain

 

 

これに対し、不妊症については、WHO、日本産科婦人科学会ともに、

妊娠を望む男女が避妊をせずに性行為をしてるのに1年以内に妊娠に至れない状態

と定義しています。

妊孕能(妊娠能力)の正常なカップルでは、膣内射精をしてると3ヶ月で約50%、

6ヶ月で70-80%、1年で約90%が妊娠するため、このような基準になっています。

不妊 - Wikipedia

 


さて、記事内のケースに戻りますが、

取材対象者はご結婚から11ヶ月後、妊活開始から8ヶ月目には妊娠発覚したことになり、

先ほどの不妊症の定義には該当していないのです。

つまり、この記事内で描かれている「不妊症」は、

「避妊をせずに性行為をしてるのに1年以内に妊娠に至れない状態」には該当せず
医学的、一般的に不妊症として定義されているものとは異なるものです。

 

察するに、”任意”で不妊治療をスタートし、”妊活”の範疇のトライを繰り返して、
その後無事妊娠できた、という幸運な例なのでしょう。

(任意でない不妊治療というものも、おおよそ想像つきませんが。)

 

記事内では「不妊症」だとは言っていない

さらに、よくよく内容を読み込んでみると、

インタビュイーが「不妊症」だという記載は記事内には一切ありません。

 

ご本人の口から発せられているのは、「不妊治療」というワードです。

と同時に、この記事タイトルに「不妊治療」と掲げているので、

編集側も取材対象者が語る内容が不妊治療だという理解のもとに

執筆したものなのだとは推測できます。

 

 

ここで、一般的なワードの定義の話に戻ります。

先にふれた通り、WHOなどで「不妊症」が明確に定義されているのに対して、

「不妊治療」というワードは具体的に何を指すのか明確な定義がされていないようです。

少なくとも、ネットで探したところ該当する情報は見つけられませんでした。

「不妊症」である、もしくは「不妊症」の疑いがある人が、妊娠を望んで産婦人科を訪れ、

受診するところからスタートするのが不妊治療。

現在のところは、上記のような曖昧なくくりのもとに使われているワードのようです。

 

この記事を講談社が掲載することの功罪

少子化対策が叫ばれている中、これから結婚や妊娠を考える年代の女性に向けて、

多くの読者を抱えるWithのような媒体が、不妊の可能性について触れて啓蒙を行うことは、

社会的にも非常に有意義だと思います。

 

一方で、講談社といった大手で、影響力の強い媒体だからこそ、

誤解を招く可能性のある情報発信には慎重になってほしいところです。

 

こういった幸運なケースのみを取り上げて掲載することは、

「不妊治療を受けるとはいっても、半年もすれば自然妊娠できるものなのだ」

といった誤解を生ずるのではないでしょうか。

それは、ひいては「不妊治療を受けている人は、焦りすぎなのではないか」

という誤謬につながらないでしょうか。

 

 

わたしは決して、後期ステップ経験者のみが不妊治療を語るべきだと主張しているわけではありません。

不妊治療を自分の言葉で語ること自体は自由だと考えています。

(不妊治療自体の経験がない方が不妊治療についての想いを語ることだって

 許されるべきです。言論の自由がありますからね。)

 

ただ、初期ステップと高度不妊治療とでは、当事者の肉体的負担も経済的負担も

比較できないほどの差があるのは事実です。

「不妊症」の定義にも当てはまらず、初期ステップのみ経験された方の所感を

「不妊治療当事者の捉え方」という形で総括しないでいただきたい。

それが、記事を批判されている方々の想いではないかと。

そして、顕微治療当事者であるわたしも同様に考えています。

 

 

例えば、災害が起こって現地の居住者の半数が被災して半数が被害を免れた場合、

被害がなかった半数の方のみを取材して、

「精神的には辛かったが、大きな被害はなかった。助かったのは奇跡」

という声だけを報じて被災した方の実情には触れなかったとしたら、

情報提供側の配慮のあり方として片手落ちではありませんか。

 

繰り返しになりますが、インタビュイーを批判するつもりはありません。

ただ、仮に取材対象者が上記のような発言をしたとして、

それをそのまま掲載することは多くの人が目にする媒体のあり方として、

許容されるのでしょうか。

メディアにおける編集の責任について考えてしまいます。

 

災害の例はやや乱暴かもしれませんが、発信する情報の受け取られ方、

記事を目にした当事者の心の機微について編集部内で何の議論もなされなかったのか、

純粋に疑問に思いました。

 

 

 

昨今、高度不妊治療費用の助成金制度などの変更もあり、

不妊症・不妊治療に関心を持つ女性も増えてきていると思うので、

不妊に関するトピックスは確実に数字を稼げるコンテンツなのかなとも思います。

 

現状の政策では、高度不妊治療が適用されるのは

「体外受精・顕微受精」のステップ以降なわけですが、

その前段階のタイミング法 や人工授精で授かれた方が明るく語る「不妊治療」の記事は

「タイミング法や人工授精でも助成金を受けることができる」といった

誤解を招くことにならないでしょうか。

 

情報を受け取る側のリテラシーの問題だと一蹴すればそれまでですが、

現状、制度についての賛否が大きく揺れている中で、

本来であれば不妊症の定義や不妊治療の適用外となる方のみを取り上げて、

不妊治療を語らせるメディアのあり方に対して、当事者としては疑問を禁じ得ません。

 

 

高齢出産についての最近の報道の偏りについて思うこと

ここのところ、著名人・芸能人の高齢出産のニュースが盛んに報道されています。

中には40代後半で第一子を授かったというニュースもありました。

 

こういった報道は、多くの授かれなかった人たちの中でもごくわずかな、

一握りの幸運な方の例を取り上げているのだと思います。

不妊治療を繰り返しても実を結ばなかったことを自ら喧伝する人は稀なので、

明るいニュースにのみ焦点が当たっているだけだと思います。

(って、自分の心を抉られる思いで書いていますが。苦笑)

 

先日リプロダクションクリニック東京の説明会を受けたのですが、

「現状の医療で当クリニックのデータだと、現実的に治療終了を

 検討すべき平均年齢は43歳くらい(もちろん、個人差はある)。

 芸能人の高齢出産成功のニュースの裏には、

 何万人もの授かれなかった人が存在する。

 ただ、それが語られないだけだ」という話がありました。

 

明るいニュースを取り上げるな、と主張しているわけではないのです。

不妊治療にある一定の効果があると報じられないことには、

助成制度増強を支持する世論は起こらないはずですし、

そういった報道にはそれで意味があると思います。

一方、偏った情報だけが発信され、現実的なバランスを欠いた認知を

醸成しかねない現状の報道の偏りには、閉口してしまいます

 

妊娠・出産を奇跡にしないことこそ医療の役割だと思う

この取材の中でインタビュイーは「子供は奇跡の存在」である、

「容易に妊娠できる人もいれば困難を抱える人もいる」とも語っています。

親の立場からすると子どもを授かり産むという体験は、

奇跡の連続のように感じられるのだろうということは、なんとなく想像できます。

個人の主観としてどう捉えるかについて議論するつもりはありません。

ただ、「容易に妊娠できる人もいれば困難を抱える人もいる」現状の中で、

妊娠・出産を奇跡にしないことが医学や医療のあるべき姿なのではないかと、

わたしは思うのです。

 

 

「With」は20代の頃にわたしも購入したことのある雑誌でした。

同世代の友人も、よく手にとっていたように記憶しています。

 

ファッション誌といえども「不妊治療」というワードで情報発信される以上、

医学や医療的な見地からも問題を孕んでいないのか、

内容の適否をより慎重に検討されることを心から望みます。

 

 

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↓過去の不妊治療に関する記事は以下のページにまとめています。よろしければこちらもどうぞ↓

www.sophy365.com

20代のわたしに伝えたい、不当な要求を笑顔で断る話法。【ゴネ得を回避する】

わたしが嫌いなタイプの代表格に「ゴネる人」というのがある。

まぁ、「ごねる人って素敵よね!」って人はいないだろうけれど。

 

ちょっとしたことにイチャモンをつけて不当に得しようとしたり、もしくは損得感情はさておいてもすんなり「YES」と言わず、こちらの言うことに何らかの指摘をしたがる天邪鬼なタイプとか。

 

こういうタイプの人って、「ちょっとゴネれば、周りが便宜を図ってくれる」という体験を重ねてきたタイプなんだと思う。いわゆる「ゴネ得」ってやつ。

でも、経験知としてそういう学習をしてきてしまった人でも、よほど頓珍漢でなければ相手によって出方を変えるものだ。

ビジネスの場ではなおさらで、ビジネスゴネ得を交渉術だと勘違いしているような輩は、ちゃんと相手を見て主張を変える程度の機転は利く人が多いと思う。

逆にいうと、「強気にでたらコイツは言うことを飲んでくれる」 と一旦学習させてしまうと、それを矯正するのは骨が折れるというわけだ。

対峙する相手と、目線の上下関係を比較するのは本意ではないが、一度「舐められる」と後々までも尾を引くこともあるのだ。

 

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不当な要求を断ることも仕事のうち

わたしはBtoB向けの無形サービス提供をしている会社のサラリーマンである。

デジタルマーケティングに関するコンサルティング業を主軸とした会社で、わたしの肩書きもコンサルタントなのだが、いわゆるPMといわれる立場でも兼任しており、クライアントから依頼を受けた業務に関して、品質やら納期やらの管理をして、かつ営業も兼ねるような役割を担っている。

なので、クライアントから無理難題をいわれることは少なくない。

要するに「安い・美味い・速い飯しか食いたくない!」「納期はそのままに、見積もりの金額変えずに、物量増やして!質も担保して!」みたいな話である。

こいつは計算ができないアホなのかなと思ったりもするが、まぁ向こうも大概は無茶だと知りつつ「強気に出ればなし崩し的に何とかなるんじゃないかしら」といった淡い期待を胸に、すっとぼけた体で無茶を投げてきている。

(先方担当者が現場担当者だったりすると、本当に物事を理解できずに無茶を言っているケースもあるのだが、交渉役に立っている時点でそれ相応の立場の人だったりするので、頓珍漢な人というのは稀なケースだと思う)

 

先にも話した通り、これを放置するとよいことはない。正当な理由がない無茶な要求に答えてしまうなど、言語道断である。

断りづらいからと一旦相手の主張を飲んでしまうと、次第に要求がエスカレートしてくることも少なくない。受け入れるとメンバーに不要な負担を強いることになるし、利益とコストの観点から望ましくないのは言うまでもない。

対応できない要求・対応する必要のない要求には、「断る勇気」をもって臨まないといけないと思う。

とはいえ、相手にしてみればゴネの作法も長年の経験の中で培ってきた彼らなりの処世術の一つなので、根本の考え方を変えることは簡単ではない。しかし、なにも考え方を矯正してやる必要は全くないのだ。ただ、「あ、コイツに反論しても無駄だな」「コイツに噛み付くと逆にめんどくさいな、やめておこう」と学習させればよいだけの話なのである。

 

 

社内外のプロジェクトメンバーが大勢いる打ち合わせの最中に、取引先から名指しで「できる方法を考えるのが、お前の仕事だろう」「できないと回答するのは怠慢だ」「納期を変えずに、対応の範囲を増やせ。見積もりの範囲内で対応しろ」と詰められていると、流石に苛ついてくる。実際、昨年末にそういう体験を久しぶりにして、けっこう消耗した。

「できる限りのことは精一杯対応させていただいているので、ご満足いただけないのであれば、弊社は力不足ですし、御社のご要望にお答えするのは難しいのかもしれないですね。かえってご迷惑をおかけすることになっても申し訳ないですし、御社のニーズに合致した企業にご依頼されたらいかがですか?」

と返したくもなるのだが、そんなことを言っても自分の品位が下がるだけ。
ここはひとつ、大人な態度を保ちつつ美しい作法で切り返してやりたいところである。

 

パターン化・シミュレーションは習慣化に効果的

ということで、苛ついていた期間中に、自分なりにハラワタが煮え返りそうな時でも冷静に対応するための言い回しを考えていた。

整理してみるとごく当たり前の対応ばかりで、何のことはないように見えるのだが、こうやってパターン化することには、大きな意味があると思う。

【パターン化しておく意味】
  • 事前にシミュレーションしておけば、その場で余計な計算をしないですむので、脳のワークメモリを消費しないで済む(短期的には、例えば、その場の議論に集中できる)
  • 脳のワークメモリを無駄に消費しないで済む状態になるので、迷い・ストレスが減り、対応が迅速になる
  • 事前にシミュレーションしておくことで、たじろがずに一定の声のトーンで対応しやすくなり、相手に「こいつ、手強いかも」と思わせることができる
  • 追い詰められて冷静さを失いそうになったときには、そのままあんちょことして使える
  • 何より「対応できない要求には「断る勇気」をもって臨む」という大原則を忘れないでいられる

人間というのは少し追い込まれると、いとも簡単に思考力が低下するものである。

思考力が低下するほど疲れた時は、考える作業を避けたい一心で、ついフラフラと「YES」と言いそうになる瞬間が訪れたりもする。

そんな時に備えて、断り方やいなし方をパターン化しておくのは、とても大切だと思う。 

 

ポーズが習慣化するとスタイルになっていく

そういえば、20代のころ営業職についていた頃も取引先に無理難題を言われる毎日を過ごしていた。

当時わたしが働いた会社の営業職はそこそこストレスが高く、離職率もそれなりに高く、人材の入れ替わりが激しかった。会社側もそれを認識しているのだろう、取引先から訊かれる「答えづらい質問・難易度の高い質問」をリストアップしたあんちょこが存在していた。100項目にまとめられているから、社内の通称は「100本ノック」だった。

このあんちょこ、営業に配属となって配布されるのは答えが空欄のものである。先輩のトークを聞いて盗んだりしつつ、各人の経験の中で書き換えていくのがならわしだった。

最初のうちは”対応に困ることがあったときには100本ノックを開く”という使い方をするわけだが、それを繰り返しているうちに、対応方法やそのロジックが体に染みついていき、最初は頭を捻って回答していたような質問にも、肩の力を抜いて落ち着いて対応できるようになっていた。

 

無茶な申し出を断ることだって、同じなはずだ。最初は抵抗があるかもしれない。

でも、無茶のいなし方をパターン化・シミュレーションとして整理して、意識しなくてもこの考え方に基づいた判断ができる「回路」を作っておくこと、それが身を救う瞬間がこの先何度も訪れるはずだ。

 

そういった意味では、若い営業担当者こそこういう情報が必要なのかもしれない。

わたしはすでにアラフォーだが、20代、30代の頃のわたしが仕事を断るのが下手だったことを思い出しつつ、当時のわたしにどんなアドバイスをするか、という視点も含めて書いてみた。

 

無茶振りパターン別 回答例

その1:「御社は●●だね」

「御社は単価高いんだよね」など、他社と比較して相対的にどうだというようなニュアンスの物言いをすることで「選択肢は他にもあるんだから、希望に応えないと発注しない」ということを暗に仄かしてくるパターンである。

これにはそうですか。弊社は●●なのですかと返す。

オウム返しで煽っているように受け取られかねないので、トーンは注意したいところだけれど、この返しをすると「なぜ●●だと判断したのか」という根拠を相手方が話してくれることも多い。

例えば、以下のような具合に。

わたし「そうですか、弊社はそんなに高いですか」

相手方「そうだよー。B社は単価●●円で出してきてたよ

わたし「なるほど、そうなんですね。」

 

ここで、相手方から特に追加情報がなく無言の場合には、ただ単に吹っかけてきているだけの可能性も高いので、空虚な奴だと哀れんでこちらも無言でスルーしておけばよい。

相手方から聞いた情報に妥当性がありそうであれば、「なるほど、ちょっと上席にも確認とってみますので、もう少し詳細お伺いできますか?」と突っ込んでいき、社内調整の材料を得ることもできる。

とはいえ、今回の趣旨でいえば基本的に断りたいわけで「なるほど。ちょっと持ち帰らせていただいて社内で再度揉みますね。後日回答させていただきます」でよい。

で、「検討したのですが、こういう理由で難しく」と別日に返答する。

間髪入れずに回答せず、少し時間をおいて回答する、というのもポイントである。

こちらは、常日頃からよく似た要求を各方面で突きつけられているので、通せる内容か否かは瞬時に判断がつくわけだが、相手が悪質だと「その場で判断・即答せずに、検討してから回答しろよ」というような主張を展開してくることもある。

そのリスクを避ける意味でも、一呼吸おいて回答するのが無難。

ただし、日数を置いてしまうと先方で余計な期待が膨らむケースもあるので、その塩梅には注意したい。

 

 

もちろん妥当性が感じられない場合には、その場で打ち返してもよい。

ただし、交渉相手の面子を傷つけてしまうかもしれないので、相手方も複数人参加の場合には、「面倒だからこの場でこのやりとりは完了させたい」という場合以外はお勧めしない。

相手方「B社は単価●●円で出してきてたよ」

わたし「なるほど、そうなんですね。
    B社の△な点を懸念されて弊社にご依頼いただいたんですよね。

    弊社は△の点でB社より質が高いサービスを提供していると思うのですが、

    そういった部分が単価の違いに現れているとお考えいただけますか」

 

変形パターンとして「あなたは●●だ」と決めつけるやり口もある。

相手が自分の思い通りにならなかったことへの呪詛を吐いてくるパターンだ。上述の「あなたができないと回答するのは職務上怠慢にあたる」というのも、この形に該当する。 

これはビジネス上の交渉ではなく、捉え様によっては人格否定の域まで踏み込みつつあるセリフで、社内で「パワハラ」と指摘されかねない発言だ。(もし、20代でこういう取引先にあたってしまい、人格や人間性を批判するようなことを頻繁に言われてストレスを感じているようであれば、上司や先輩に早めに相談することをおすすめする。)

そんな言葉を吐いてカタルシスを得ているのだな南無、と両手を合わせつつ、何を言われようと受け入れられないものは受け入れないので、軽く受け流しておけばよい。

わたし「それはいたしかねます」

相手方「そんな調整さえできないのは、あなたに力がないからでしょう」

わたし「そうですね、力不足で情けない限りです」 

負けるが勝ちである。

ここで相手方と議論しているのは、自分の力量についてではなく、「対応する/しない」についてだということを忘れないでほしい。対応しないことを力量と無理やり関連づけて煽ることで、こちらが下手を打つのを誘導しているだけだ。

むしろ、力不足ですいませんという姿勢を見せた途端、虚を突かれたように相手が黙ることも多々ある。

ちなみに、自分の力量が小さいことを認めたところで、それを理由に担当者を変えろと言われることは滅多にないもちろん断言はできないけれど、担当を変えろと言われたら、そのまま上にそれを伝えればいいと思う。物分かりのいいクライアントを担当できた方がこちらも幸せなのだから、上司が真に受けてアサインを調整してくれるならば、それはそれで好都合だと考えればよい。

ちなみに「怠慢」など、こちらが手を抜いているような指摘だった場合には、事実でなければ縦に首を振らないのが無難だ。「YES」と言ったことに対して、なんらかの埋め合わせを要求されないからである。そういった指摘の場合には否定して、正当な反論を展開するのもよいと思う。

(怠慢系の対応策は後述)

 

その2:「上司を出せ」

ビジネスゴネ得だけではなく、飲食店などでもこのパターンで激昂している(ように見える)人を時折、目にする。

良識があり相手への配慮ができる人間であれば「上司を出せ」の前に「●●部長にも掛け合って、ご検討いただくことは難しいでしょうか?」といったアプローチをしてしかるべきだと思う。

このプロセスをすっ飛ばして「上司を出せ」と主張するのは、まさに「そう脅せば言うことを聞く」と思っているパターンの典型。

上記のプロセスを踏んだ上で、上司を出せとはいわずに、上司もCCに入れてメールを送るなり何なりしてくるのがスマートな大人対応と言えよう。「上司を出せ」と要求しないことには、相手方の上司にアプローチできないような関係性の築き方をしている時点で、相手はちょい間抜けなのだ。

とにかく、こういうケースは淡々と適切に対処して、吠え面をかかせたいところである。

相手方「君じゃ話にならない。上司を出せ!」

わたし「(間髪入れずに)それは致しかねます。

    現場責任者はわたしですので、わたしがお伺いいたします

たじろがず、毅然とした態度を示すのがポイント。

本当にろくなもんじゃないと思うが、こういうことを言いたがる人って、相手の「怯え」や「面子」に非常に敏感で、こちらの動揺を察知すると余計に強い揺さぶりをかけてきたりする。本来であれば「淡々としたトーンで飄々と」などというのは小手先のテクニックだが、こういう相手には意外なほど効果を発揮する。

というか、血の匂いに敏感なハイエナのように怯えを嗅ぎ取る輩なので、たじろぐ素振りを見せると割りを食うことが多い。

もちろん、若手の場合、自分の手に追えなさそうな話であれば、上司に同席を頼むのが妥当だと思う。

ちなみに、相手方がそういった主張を展開してきて、こちらに落ち度がない場合などは、個別に双方の上司を同席させる場を設け、「契約時の合意通り、こういう進行をしており(ご納得いただけていないようだが)、今後もこの形で進行しますがいいですよね」と明示的に意思確認する場を設けるとよい。

その会議の間だけ、急に相手方担当者が温和な態度になったりもするので、単純に面白いということに加えて、今後も相手から筋違いの主張が続く場合などに、先方上司から先方担当者へ釘を刺してもらうための布石にもなり得る

相手との関係性にもよるが、こちらの上司だけではなく、先方の上司も同席させることがベターなことは言うまでもない。監視の目が増えれば、相手方が主張を展開する際に考慮すべき視点が増えるということなのだ。

加えて、相手方の上司の出方を探ることで、先方の担当者に問題があるのか、もしくはクライアントの企業体質そのものに問題があるのかの見当もつく。

双方の上司を同席させるのは、相手を牽制する意味でも非常に効果的だ。

 

 

その3:「対応が遅い。何をやっていたんだ!」

もちろん、自社の対応に不手際があれば、その点を詫び、改善すべきなのは言うまでもない。

ただ、この主張がいささか妥当性を欠いている場合には、こちらが何らかのアクションを起こすまでに、どんなプロセスがあり、それにどのくらいの時間がかかるのが妥当なのか、相手方の主張者が正しく理解できていないケースが多い。

例えば、何らかの障害が発生して、それを復旧させる必要がある場合には、事象としてエラー発生が発覚してから、原因切り分け・調査を行い、原因が特定できれば対応方法を複数パターン検討し、リスクや工数などを多角的に検討して、対応方針を決め、実行に移すという流れになる。場合によっては、瑕疵担保に該当するか否かに応じて、どちらの負担で対応を進めるのかといった協議も必要になるだろう。

上記の下線部分については、先方の責任者が詳細を把握していなかったりすることが多いので、「遅い!まだなのか!」という話になりがちなわけである。

相手方「先日連絡した●●の件ですけれど。もう1週間経ちますよね。

    この1週間何やってたんですか」

わたし「われわれもスピード感が求められていることは

    重々承知しております。

    一方でこちらについて判断を下すためには

    △や◆といった事項の確認も必要ですので、

    現在はその詳細確認を進めている段階にあります」

 ーーーーーーー

わたし「並行して△や◆といったご依頼もいただいておりますので、

    担当リソースを調整しつつ、可能なタイミングで

    作業進行している次第です。」

ここで大切なのは、まず「ちんたらやれば良いと思ってるわけではないよ。なる早で対応すべく動いてるよ」 と伝えること。

その上で、何に時間がかかっているのか、先方の期待より遅れているのは何故なのか、説明する。

それでも遅いと非難してくる場合には、現状で依頼いただいているリソースでこれ以上のスピード感を求められても対応できないことをロジカルに説明して、見積もりを提示すればよい。

 

その4:「簡単にできないというな」「それは職務怠慢だ」など

「わたしの上司でもないお前の指示を仰ぐ謂れはないのだが」「お前の要求に応えるメリットが見つからないんだが、わたしを動かしたければ金を払ってもらえます?」と言い返したくもなるが、グッと堪える。

自分の主張通りに相手が動かなかったことに対して、圧力をかければ自分の意のままに動いてくれるだろうという力学での発言なのだろうが、この手を使ってくる相手はそれ相応に追い詰められている。

「やります」「できます」と言わせたい一心で口に出てきた言葉が、「できないと言うな」という小学生みたいなセリフなのである。

そのことを頭の片隅において、声のトーンとしては寄り添いつつ、できないものはできないと改めて伝える必要がある。

わたし「それは、非常に難しいですね」

相手方「この場でできないというな!やれる方法を考えるのがお前の仕事だろう。

    検討もしないのは怠慢だろう」

わたし「お気を悪くされたならば申し訳ありませんが、

    私もこの場で「できます」と即答することはいたしかねます

まずは最初に、どういう形で圧をかけてこようと、この場で「YES」とは言わないかんね!という意思表明をする。 察しのいい相手の場合は、この発言だけでその場での攻撃の手を緩めたりもする。

 

その上で、少々ヒートアップしている相手が冷静になるのを待って議論を続けたいのであれば、

わたし「これは重要な点ですので、持ち帰らせていただいて、

    社内で検討させていただいてもよろしいでしょうか」

 などと一旦躱してもよい。

 

もしくは、検討しろという主張自体に難がある場合などは、それを指摘してもよいと思う。

相手方「この場でできないなどと言うな!

    やれる方法を考えるのがお前の仕事なんだから、

    検討もせずに回答するのは怠慢だろう」

わたし「なるほど。

    通常、実現方法の策定といった工程は変数も多く

    検討自体に工数を必要とするため、

    お見積もりの上で対応させていただいておりまして

    次回お見積もりをご提示させていただきますので、

    その上でどのような形で進めるかご検討いただけますか?」

タダでおかわりできると思うなよ、という返しである。

物わかりのいい相手であれば、「検討しなくてもよい」と言ってくれたりもするので、敢えて少しきつめに釘を刺したい時には有効だ。

ヒートアップ中に鋭い返しをすることで我に返る余地のある相手の場合には有効だが、プライドが高い相手にはかえって火に油を注ぐこともあるので注意。

 

その5:「文書で回答しろ」「謝罪に来い」

相手方の「一度痛い目見させてやるからな」という怨念が滲み出ているパターンである。

もちろん、何らかのトラブルがあったのであれば、経緯報告書くらいは提出してもよいと思う。とはいえ、起こった事象に対して上記のような要求が過度に思える場合には、いちいち誠実に対応しないとならない謂れはない。

 

いずれも

「申し訳ありませんが、それはいたしかねます」

「わたくしの一存では、いたしかねます」

で応対。

 

30分程度の打ち合わせで納得いただけるのであれば訪問してもよいのだが、お仕置き的な意味合いでこの要求をしてくる輩は、早朝や深夜などの良識に欠ける時間帯を指定してくることも多い。

その場合には、業務時間外だと明確に伝えてしまえばよい。会社の規定に守ってもらうのが吉である。

ご指定いただいた時間帯は、あいにく業務時間外ですので

お伺いいたしかねます。 

逆にあなたが20代中盤くらいまでの若手で、上司や職場との環境も良好なのであれば、「業務時間外なので、御社に訪問しても問題ないか上司に確認の上、返答させていただきます」くらい言ってやってもよいかもしれない。

これを口にする若手は、ちょっとお間抜けな場合もあるけれど、優秀で会社にしっかり守られている人間であることも多い。あえてこちらから「上司」の存在をチラつかせることで、先方を牽制できるのは、上述の通りだ。要求の妥当性が薄ければ薄いほど、相手方は肝を冷やすはずである。

 

 

無茶な仕事を受けてしまうことの弊害

冒頭に「不当な要求は断ることも仕事のうち」と書いた。

これは短期的に自分やプロジェクトメンバーを守るという意味合いがあることは言うまでもないが、長期的にみても意味がある。

最近、「無理な要求は受けない」という組織文化を作ることが多重に重要だと感じる。

 

「受けるべきか、受けないべきか」や、利益とコストといったPLの感覚が肌に馴染むまでには、どうしたって時間がかかるものだ。

様々な経験からそういう肌感を蓄積・吸収している若手の時分に、「無茶振りをされても対応する」「むしろ無茶を言われるほど指数関数的にがんばる」ことを美徳として学習してしまうと、本人のその後のキャリアに暗い影を落とすことになる

加えて、それは本人への悪影響に止まらない。

こういう人は多くの場合、周囲にも自分と同様のベクトルの「がんばり」を強要する傾向が強い。

精神論を撒き散らしてチームを疲弊させる。しかも、本人は「わたしは精一杯がんばった」「正しいことをしている」という実感を強く抱いているので、なかなか改善が認められない

こうした若手が中堅になり、やがて業務を指示・管理する立場になることで、「不当な要求に対応するのが当然の組織」が再生産されていく構造を、これまでに幾度も目にしてきた。

 

特に営業的な立ち回りが要求されるポジションだと「顧客の要求に応え、次のオーダーも取らなくては」という心理も働くので、要求の適否の判断はより難しくなり、知らぬ間に当人が追い込まれている、あるいはチームを追い込んでいるという状況に陥りかねない。

そして、そういう状態をなんとなく察知しながらも、問題が表出するまでは静観しているのが組織側の常である。

 

社員に不要なストレスがかかる状態を認識しながら放置することは集団心中的だとわたしは考えるのだけれど、営利組織である以上、マネジメントにそこまでの配慮を求めることは、それこそ「不当な要求」にあたるのかもしれない。

 

疲れ果ててNOという気も起こらない日の自分を守るために、そして、いつか不当な要求に涙を飲みながら応対した若い自分へのねぎらいを込めて、まとめた。

 

 

なんで急にこんな記事を書こうと思ったかって?

それは有給の予定を変更して、クライアントの要求に応えて半日作業をしたからだよ。

それ、Notionでよくない?情報整理の万能ツールNotionにハマった理由。

最近、Notionというツールにハマっている。

しばらく前から、名前はWebで目にしつつも、触ってみるには至らなかったんだけれど、遅ればせながら使い始めたらこれがめちゃくちゃ便利だった。

どう表現すればよいのか難しいけれど、わたしの感覚では

  • EvernoteのWebクリップ機能
  • GitHubのWiki機能
  • Google ドキュメント
  • Google Spreadシート

これがひとつになった、全方向お任せあれみたいなツール。

 

 

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使い始めたきっかけはEvernoteへの不満

わたしはメモ魔なので、かれこれ10年近くEvernoteを使ってきた。

Webで気になった記事のクリップ(仕事・Tech関連・レシピなど)、ちょっとしたPDFの保存、仕事の軽い議事録、個人的な日記、夫と共有する忘れてはいけない情報(郵便受けの鍵の暗証番号とか)はほとんどEvernoteに保存してきた。

あとは、個人的にリストにして管理したいものの多くもEvernoteでリストを作っている。(その年のアクションプラン・目標リスト、気分転換リストとか。詳しくは後述。)

Evernote無料版はノート容量、月間アップロード容量に上限があるので、Webクリップの容量が増えるにしたがって、ここ数年は制限を取っ払うために有料のプレミアムプランも利用していた。

議事メモやタスクリストについては、その時々でGoogel KeepやMicrosoft One Noteに浮気したりしながら、それでもメインはEvernoteを利用していた形だ。

 

 

でもEverNoteには時折ちょっとした不便を感じていた。

 

不便の理由の一つ目は、Markdown記述ができないこと。

現在勤めている会社のデフォルトのコミュニケーションツールはSlackで、他にもコンフルやBacklogとかを併用している。なので、Markdown方式を使う機会がどうしても多い。一度その記述式に慣れてしまうと、それが使えないことに不便を感じてしまう物で、メモを取る際にMarkdownが使えないことがタイムロスに直結するように感じられる。

 

二つ目は、Google ドキュメントからのコピペが効かないこと。

これまた会社のデフォルトが、GoogleドキュメントとMicrosoftオフィス併用なのだけれど、Google ドキュメントから Evernoteにコピペをすると、体裁が崩れてしまうのだ。

わー、体裁整えるためだけに時間使うとかバカバカしい。きれいにコピペできるツール使いたいよ、と思っていた。

 

三つ目は、クリップしたデータ間の関係づけがしにくいこと。

Evernoteもノートブックとして複数のページをひとつにまとめたり、タグで管理したりする他、他のノートへのリンクをつけることはもちろんできる。

でも、各情報を親子構造で紐付けたり、1:Nになるようなデータを紐付けて管理するとなると、ちょっと煩雑になる。もっと簡単に直感的に、RDB的な発想でリレーションをはれるといいのにな、と常々思っていた。

 

四つ目は、データの読み込みに時間がかかること。

PCでも使うし、出先でiPhoneのAppでEvernoteを開いて、ちょっとした情報を確認したいこともままある。読み込みに時間がかかって表示するまでに数秒待たなければならない時もあって、地味にストレスを感じていた。

 

五つ目は、有料であること。

上述の通り、Evernoteを無料で使用することもできるのだけれど、ちょっとした資料などを添付しようとしたり、大量のクリップをしようとすると、容量制限をくらう。

近年は、データのアップロードはGoogle Driveにもできるわけで、有料プランを使う必要性は薄れてきてはいるけれども。

 

ちょうど、EverNoteプレミアムプランの年間更新時期が3月半ばなので、

上記のような観点から、そこで解約してもいいかなー、などと少し前から思っていた。

それで改めてNotionに関する記事を読んでみたら、わたしのニーズにきれいに応えてくれるツールだったのだ。

 

Notionってなに?どんなことができる?

この疑問への回答は、すでにあちこちでWeb界隈の方々が紹介している記事がたくさんあるので、そちらを参照してほしい。

 

ざっくりとできることを理解するには、このページがわかりやすい。

note.com

 

こちらも。アカウント開設の手順と、最初に何をすべきかも少し書いてある。

seleck.cc

 

あらあら、便利なんじゃないのNotion。

しかも、2021年中に日本語にローカライズするという記事も昨年末に出ていた。

人気の情報共有ツール「Notion」が2021年中に“日本語対応“へ──日本第1号社員を直撃 | DIAMOND SIGNAL

 

しかも、EverNoteに蓄積していたデータのインポートもUI上の簡単な操作だけで完結しちゃうという。

これは使わない手はない、善は急げだ。

ということで早速、EverNoteのノートブックをいくつかインポートしてみた。ちゃんと連携されている!(当たり前だけど)

 

早速使ってみた。わたしの使い方。

まずはリストの作成である。(★印はこれから作りたいもの)

  1. ワードローブリスト
  2. 不動産物件内見物件リスト
  3. 2021年のアクションプラン・目標
  4. 気分転換リスト
  5. アナログレコードリスト★

 

ワードローブリスト

ワードローブリストはスワンさんのYoutubeでの解説を参考にした。

こちらの動画の解説欄から、動画内で出てくるワードローブリストのテンプレートがダウンロードすることもできちゃう。スワンさん、太っ腹。

 

スワンさんのテンプレートをベースにしつつ、わたしは各アイテムの「購入金額」を「購入年からの年数」で割り戻し、「1年あたりのそのアイテムのコストがいくらになっているか」も表示する形式にした。

というのも、ちょっといい服を買う時もあれば、例えばユニクロとかで安いけれど1シーズンで気倒すような服も買うこともあるのだけれど、それなりに高額なものについては10年、物によっては20年使っているようなアイテムもあったりして、実際どちらのチョイスの方が高くついているのか、データにして確認してみたいな、と思ったため。

最近、ファッションに対しての情熱が薄くて、「この金額ならば、買って失敗してもいいか」というような安易な妥協から、安価なものを吟味せずに買って後悔するきらいが強いので、それに対する警鐘としてそんな項目を作ってみた。

 

2021年のアクションプラン・目標

毎年、年初に立てているその年の行動指針とかマインドセットのようなもの。

今年もEvernoteに箇条書きでリストアップしていたけれど、Notionに移行するにあたって、さらにチャンクダウンして、細かいアクションに落とし込んで整理し直してみた。

 

不動産物件内見物件リスト

上記の今年のアクションプランには「中古マンション購入・リノベーション」が含まれている。

現在まさに、リノベ会社さん数件に話を聞いて、物件の紹介を受けているのだけれど、内見の件数が増えてくると、どの会社からどの物件を紹介されたか、あやふやになってくる。

加えて、駅ごと、広さごとの物件価格の相場感のようなものを把握したいという狙いもあって紹介された物件をまとめている。

こういったテーブル形式でまとめられるデータの整理は、本当にNotionはドンピシャ。

 

気分転換リスト

うつがひどい時期に作ったもの。

悲観的な考えを反芻してしまう時に、それを止めるべく何をするかという行動リスト。

気分が落ち込むと、どうやって気分転換・発散すればよいかを考えるのも億劫になる。でも、リスト化しておくと選択肢の中から選んで行動するだけだから、それだけで楽。最近は比較的元気なので、このリストを開くこともないのだけれど、いざというときにこのあんちょこがあるというだけで少し気持ちが楽。セーフティネットというか、ちょとしたお守りみたいな物である。

必要に迫られてこのリストを開くときは、思考力が落ちていて小さな選択・決断をすることすら避けたいタイミングなので、なるべく考えずにチョイスできるように、必要に応じて選択肢をフィルタリングできるようにしておきたい

例えば、家でないとできないもの/外出先でもできるもの、お金がかかるもの/かからないもの、体力を使うもの/使わないもの といった観点でソートして、その時に切れるカードをフィルタリングしたいのだ。

あれ、これってまさにNotionが得意なことじゃないか。案の定、まとめてみたらぴったりだった。

 

アナログレコードリスト★

名前の通りである。

まずはWantリストを整理したい。

ふらりと目的もなく散歩に出掛けた先で、ふと気が向いてレコード屋さんに立ち寄ったりする時があるんだけれど、はてさて自分がどんなレコードが欲しかったんだか、パッと思い出せない時があって。

これまではEvernoteで管理していたんだけれど、それこそNotionでテーブルデータ形式で持たせれば、ジャンル毎、国毎、レーベル毎など、入ったお店のレコード棚の状況居合わせてソートして確認できるからめちゃくちゃ便利になると思う。

 

あとは、所有アナログレコードのリスト化

今のところ1000枚程度なので、何を持っているかは把握しているつもりだけれど、しばらく触っていないと忘れるかもしれないし。かつ、今のところ売却するつもりもないけれど、レコードを手放したくなったときに、リスト化しておけば売りやすいと思うので。(売る気になってからリスト作るのは、絶対に億劫だと思う)

 

わたしなりの上手な使い方を探りたい

今後、Webクリップ、議事録はNotionに集約させるつもり。

(とはいえ、昨年までのクリップ・議事録はNotionにインポートせず、そのままEvernoteを参照するようにする)

諸々のリストも、個人で使用しているものは全てNotionに移行させる。

夫と共有しているリストは、(夫の都合もあるので)しばらくはEvernoteを利用するけれど、ファイルの管理はGoogle Driveと自宅のNASサーバーに集約すれば、Evernoteのプレミアムプランを解約しても何の問題もなさそう。

 

ちょっと気になるのは、先週末の夜にNotionが落ちていたこと。

翌朝には解消されていたけれど、仕事の議事メモを保管するとなると、アクセスできない時間帯が発生することがクリティカルになるケースもあるので、サービスダウンの頻度は今後もウォッチしていきたいな。

 

 

そして、Notionで管理すべき物事の第一位にタスク&スケジュール管理を挙げる人も多いようなので、それも近日中に試してみたい

 

↓Notion本体のサイトより

 

 ↓チームで使えるのいいな。タスクの割り振りをBacklogで管理するのって煩雑。。

 

 

↓Googleカレンダーと合わせて使えるところが魅力。


現状、仕事・プライベート共にスケジューラーはGoogle カレンダーを使っていて、仕事のタスクはGoogle To Do ListとMS To Do(旧Wunder List)を使い分けている。

こちらも時折、各ツールに不便を感じていたので、Notionでの集約管理を試してみたい。

 

 

正直、いまのわたしはまだ、「Notionを使う」ことそのものにハマっている段階だなと思う。なので、しばらく楽しみながらいろいろな使い方を試した上で、Notionを使って「効率よく」物事を管理する状態にシフトしていきたいなと思う。

【不妊治療ログ】7周期目:培養請求書の到着(2021年1月:41歳1ヶ月)

1/31に採卵した2つ、ひとつは受精ならず、ひとつは受精したものの初期胚盤胞の段階で成育が止まってしまったのですが、その際の請求書が届きました。

 

今日は、その請求書のお話。

そして、不妊治療とは全く別件で医師から説明を受ける機会があって、診療方針について「知る」「知らせる」ということについて改めて感じたことがあったので、今日はそれについて書きます。

 

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高度不妊治療と培養の請求書(加藤レディスクリニックの場合) 

加藤レディスクリニック では、ART段階で採卵・移植周期には毎回の診察時の精算は発生しないことが多いです。(初診のときは別ですが)

1回の採卵のためにD3,D10くらいのタイミングで受診しますが、その際の費用は採卵時にまとめて精算になります。

採卵時の消耗品4万円はその場で現金払い、その他の費用は現金・クレジットカード払いのいずれかを選ぶことができます。

 

その上で、凍結に至った個数に応じて、培養費用(体外・顕微)が発生し、こちらは後日郵送で請求書が届き、銀行振り込みします。

 

郵便物はこんな形で届きます。

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一見、「加藤さんからの郵便物」。不妊治療の請求書だとはわからないですね。

2世帯で、ご両親には治療を伝えていない方、夫には伝えずに検査等を受けている方もいらっしゃると思うので、そういった事情にも配慮されているのだろうな、と思います。

 

そして、肝心の請求書はというと…

費目:胚盤胞培養中止費用 

費用:88,000円(税込)

「胚盤胞培養中止費用」という表現をされると、結果に結びつかなくともかかったコストはきっちり請求されるという現実を突きつけられるようで、虚しさが募りますね。

もう少し、「培養・凍結なし」とか、なんつーかちょっとマイルド?な表現がありそうなものですが…、まぁ、費目がなんであれ出費は一緒なので、 完全にイチャモンではありますが。苦笑

 

 

本日の会計

ということで、精算です。

 

 

顕微・培養費用: 88,000円

-------------------------

 累計     :2,019,001円

 

ついに200万円の大台に乗っちゃいました。

やれやれ、仕事がんばります。

 

今年、わが家では不妊治療と並行して、中古マンションを購入してリノベする計画が進行中で、週末になると夫とふたり、中古マンションの内見に出かけたりしています。

不動産の購入という大きい買い物を前に、「頭金があと200万円あれば手が届くけれど、今の状態でこれを購入すると苦しいかなぁ」という場面にも出くわします。

そんな時に、ちらと「不妊治療費用が…」という思いが頭をかすめるのです。

 

もちろん、不妊治療はわたしがやりたくてやっていること。

治療を受けずに自然に授かれるに越したことはないのですが、それを言っても始まらない。できないのであれば、授かるためにできることをやるのみ、と考えて、自分から始めた治療なので、納得していないわけではないのです。

それでも、結果につながらず費用だけが膨らんでいく現状を思うと、やはり心にモヤがかかってしまいますね。

 

 

慶應病院での診察(夫の付き添い)

不妊治療から話題が変わりますが。

 

昨年夫が受けた人間ドックで不調が見つかり、その検査入院をするかどうかの判断のため、この週末は夫の慶應病院受診に付き添いました。

難病指定となっている疾患で、投薬が始まれば薬の費用が月10万円ほど、難病疾病申請をすると都道府県から補助が出るのですが、それでも月3万円ほどの出費になるそうです。

不妊治療をしていると、医療費に対する金銭感覚が狂ってきて、月数万円ならば痛くも痒くもないような気になってしまいますが、これからずっと毎月3万円の出費が続くとなると、実際には小さい金額ではないと思っています。(3年で100万円ですからね。)

 

その投薬を受けるかどうかの検査入院についての説明を受けるため、夫の受診に付き添いました。

担当の医師の方はとても熱心で、質問にも細やかに応えてくれました。実際の臨床データや、過去のケースの平均値も交えて、納得できるように説明してくださっていたと思います。

驚いたことに、こちらから質問した際に、まず「ありがとうございます、それはですね、、」と受けとめてくださる。

(質問に対して「ありがとうございます」と返されると、まるで営業担当者と話しているような気分になったりもして、最初はかえって警戒心を煽られましたが、ただ情熱的な医師で、親身になってくださっているだけでした。わたし猜疑心強すぎでごめんって思った。)

質問に対して、面倒臭そうな表情を見せずに、誠実に応えてくださるのって、大切ですよね。なんというか、信頼感を醸成する土壌の一つとして、重要な要素だと思うのです。

 

かつ、

  • 難病申請を受けるかどうか
  • 投薬を受けるかどうか

この2つの項目でそれぞれ異なる選択をした際のメリデメも整理して説明してくださいました。取りうる選択肢と、それぞれの良い点・リスクをちゃんと伝えたうえで、「納得のいく選択をしてください」と判断をこちらに委ねるような形でした。

 

不妊治療をしていると「次は〇〇(採卵・移植)でいいですね?」と医師から聞かれることが多く、その度「他に何かできることはあるのかな」「次に採卵する場合と、移植する場合とで、それぞれのメリデメはあるんだろうか。採卵が続いて、卵子の質に影響するってことはないのかな?」などと疑問が頭に浮かぶわけですが、その疑問を口にする前に、医師から積極的な説明を受けたことは、わたしはまだありません。

質問したとしても、納得のいく回答をくださる医師はごく一部で「皆さんそうされてますから」やら、「お好きに決めてください」やらという、もはや回答にもなってないような返答が来ることも多いです。

 

医療従事者の側でも、不妊治療においては、まだまだ「インフォームド・コンセント」に対する意識や水準が低いんだな、というようなことを感じた1日でした。

 

ふー。

とはいっても、医療側が変わるのには時間がかかりますからね。

そういうものだと事実は受け止めつつ、この状況でも有益な情報を医師から引き出せるように努めようと思います。後悔しない妊活ライフを送りたいものです。

そして、5年後、10年後に不妊治療を受ける方々が、少しでも晴れやかな気持ちで治療に向き合えるようになっているといいな、と思わざるを得ません。 

 

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↓過去の不妊治療に関する記事は以下のページにまとめています。よろしければこちらもどうぞ↓

www.sophy365.com

【不妊治療ログ】これからの治療継続について夫と話し合う

先日、加藤レディスクリニック に転院後2回目の採卵・顕微受精でも、胚盤胞が得られなかったことを書きました。

 

 

その結果を受けて、「これまでに治療にかかった費用も踏まえて、これからのことを話し合おう。治療費も無限に捻出できるわけじゃないからさ」と夫に言われました。

ちょうど、わたしが外出中に夫からLINEで上記の連絡を受けたのですが、治療を継続するにしても、いつまで不妊治療を続けるのか終わりのタイミングを明確にしようという話なのかなと推測し、家に戻る足取りが重かったです。

 

今回は治療継続について夫と話しあった内容、説得材料としたポイント、自分で考えている今後の治療方針などを整理してみました。

 

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不妊治療、いつまでやるのか問題

不妊治療をいつまで続けるか、いつ終わりにするか。

これは、治療をしている人ならば決めておくべきことであり、一方でとても決心が難しい問題だとも思います。

どうしても「これまではダメだった、でも次の一回で授かれるかもしれない」という期待を手放すのは難しいものです。

 

実際、去年の夏前に最初の顕微授精に踏み切った段階では、せいぜい2,3回の採卵&移植で諦めをつけようと思っていました。そのタイミングで夫からは、「費用的に150万円くらいまでが妥当じゃない」と言われていました。(とっくに超えてますけれどね)

正直、その金額に納得はいっていなかったのですが、不妊治療でも体外受精・顕微受精のステップとなると仕事との両立や精神的な負担もそこそこあると聞くし、「まずは2、3回試してみよう。その2,3回のうちに妊娠するかもしれないし」と思っていました。

 

結局、昨年内に2回顕微受精・2回移植をしてして、それまで通っていたクリニックから加藤レディスクリニックへの転院を経て、さらに2回顕微受精(2回とも胚盤胞まで育たず、移植はならずでした)して現在にいたるわけですが、まったくもって諦めがつかないです。

昨年11月に転院を決めた段階では、高度不妊治療の成否は培養士の腕によるところも大きいという情報をよく目にしていたので、「培養の技術は都内屈指といわれる大手クリニックに転院してみよう」「そのクリニックで2ターンくらい繰り返したら、諦めもつくかもしれないな」などと思っていたのです。「とはいえ、続けてもあと半年かな」とかね。

それが今では、「まだまだ妊娠に向けた道のりは始まったばかりだ、もう少し続けたい」と思ってしまっています。少なくとも、あと1年近くは試行錯誤しないと、わたしの気は済まなさそうです。

 

不妊治療を継続したくなった理由

なんとしても子どもを授かりたいという気持ちが根底にあるのは言わずもがなですが、それ以外にもこの心理変化にはいくつかの理由がありました。

 

1. 転院してから不妊治療の心理的・身体的な負担が減った

まず、心理的負担について。

正直、顕微授精をスタートした当時は、自分の治療の方向性もわからず、治療のサイクルも理解できていないので次はどうなることやらと都度ハラハラしていました。その「先行きの見えなさ」が辛かったです。この点は、回を重ねるごとにサイクルを理解したのと、書籍から知識を吸収したことで、ずいぶん楽になりました。

 

加えて、前のクリニックは家から徒歩で通える距離でしたが、待合室の席が少なく、座れないこともあったり。転院後のクリニックは待合室の席数は十分で、中にはデスク席もあるので、待ち時間が長くなる日はPCを持ち込んで仕事をしながら待つこともできます。

今のクリニックはドアtoドアだと30−40分かかりますが、それでも待ち時間のストレスが少ない方がわたしには気が楽でした。

 

あと、身体的・心理的な負担に関連しているかもしれないな、と思うのは刺激法。

以前はPPOS法で注射や皮膚吸収パッチで黄体ホルモン剤を補充していて、日中眠くなったりすることが多かったのですが、現在は低刺激法なのでホルモン剤による体調への影響は少なくなっているように思います。

 

2. 親として子どもを育てることの恐怖心が減った

以前は、「わたしなんかが母親になれるだろうか」「なれたとして、子どもを不幸にしないだろうか」とよく不安になった時期がありました。

子どもは生まれてくる家庭を選べないわけですから、できるだけその時々の最善の対応をしてあげたいと思うのが親心だと思います。とはいえ、いろいろな事情から(例えば経済的な事情や、仕事との兼ね合いなど)ベストな選択ができるとは限らないわけです。というより、ベストを尽くせたと納得できることの方が少ないと思う。

そういった場合に必要以上に自分を責めずに、それでも努力を続けることができるか、そこに自信が持てずに不安に感じることが度々ありました。

この不安・自信のなさは、この半年ほどで、ずいぶんと和らぎました。

変化の直接のきっかけがあるわけではないのですが、ひとつ思い当たることとしては、自分の短所についての捉え方が少し変わったことでしょうか。

わたしが自分の短所だと自覚している性格というか特性のようなものがあるのですが、この半年間でその部分を改めて見つめ直し、その特性をうまくなだめる方法や、むしろ武器として利用する術を考えて実践するということを重ねてきた結果、少し自己肯定感が上がったことなどが理由かな、と思っています。

 

3、知識を得ることで、まだ可能性はあると思った

治療を進める中で思うような結果が得られなかった場合に、どういった選択肢をとりうるかを理解するために、不妊治療の書籍を読むようにしたことは以前書いた通りです。


前回のエントリでも触れましたが、臨床データを基にすると

  • 良好胚盤胞をひとつ手に入れるには、採卵で平均12.8個の卵子が必要
  • 出産できる卵子の割合が高い30代半ばまででさえこのような割合であり、高齢妊娠の人はこの2倍くらい厳しい状況になる

わけです。4回の採卵で15個の卵子では、41歳のわたしが妊娠できないのは、妥当な結果なのです。

こりゃ、数こなすしかないわ、ということになります。

 

 

数打ちゃ当たるのか問題

そりゃ分母の数は大きい方がよいのは言うまでもありませんが、不妊治療には経済的負担もあるわけで、気軽に球数を打てるものでもないんですよね。

 

転院を決める前、顕微授精2回が徒労に終わった後の診察で、前のクリニックの医師からこんなことを言われたことがありました。

41歳の当院のデータだと、顕微授精にステップアップして

 1回目で妊娠できる人が●%、2回目が●%、

 3回目以降だとガクンと数字が落ちて●%以下になります。

 要するに、顕微受精で授かれる人は、だいたい2回までくらいで

 授かっているんですよ

とはいえ、3回目以降で41歳以上で授かっている人は、その可能性にかけて

 ずっと治療を継続してきた人たちなんですよ

さて、どうします? 継続します?

その時はその医師の物言いには、心えぐられるような思いでした。

今は、その数字は妥当かもしれないな、とも思います。

この解釈についてわたしの憶測の域をでませんが、2回目までで受精できる方というのは、それこそ顕微の恩恵を受けている方(≒精子が卵子に到達するところまでにボトルネックがあった方)で、それ以外の方は精子以外にも卵子の質などの問題を孕んでいる方なのではないかと思います。そして、おそらくわたしも後者の部類なのかな、と思っています。

当時は、この医師の発言で通院するのに嫌気がさしてしまったのですが、数打たないと妊娠できないよというデータは、事実その通りだよなと思います。

(転院したこと自体は正解だったと思っていますよ。)

 

 

累計治療費を含め、夫と話し合い

ということで、夫と話し合いです。

治療費については、確定申告用にすべて計算してあったのですんなり出ました。

話し合いの時点では、まだ今回の採卵後の顕微培養費用の請求は届いていませんでしたが、それも含めるとちょうど200万円を超えたところ。

 

わが家では不妊治療費用はわたしが一括して管理しています。大きな出費となるタイミングでは通院の都度、夫に金額を伝えていましたが、合算費用は伝えていなかったので、金額の大きさに夫も少し驚いた様子でした。

 

「もうそんな金額になってたんだ。。」と夫。

「いつまでも続けるというわけにもいかないから、あと何回とか、あといくらとか、少し目処を立てておかなければいけないね」と続きます。

ああ。やっぱり、治療のおしりを決めようという話の展開になってしまいました。

 

まだ治療を継続したい。なので、夫を説得する。

率直に「まったく諦めがつかない。まだ治療を続けさせてほしい」と、まずはお願いをしてみました。

うーん、と腕組みする夫の反応も想定内。

 

ここからは治療を続けたいという気持ちを込めて、どれだけ真剣に不妊治療のことを考えているか、治療方針も検討していて、それに妥当性があるかを伝えて、「こりゃ俺の判断より妥当そうだな」と思わせるためのプレゼンです。

 

【説得材料1】30代でも胚盤胞を得るには13個の卵子が必要

先ほど触れたデータの話ですね。

40代のわたしは2倍ほど厳しいとしても、26個卵子が取れれば、胚盤胞は得られるであろうという話です。

結果が出る前にやめるから失敗となるのだ、うまくいくまでやるから成功するのだ、というやや乱暴な論理です。

 

【説得材料2】治療方針:刺激法を変えてみたい

胚盤胞を得るのにたくさんの卵子が必要ということであれば、今のクリニックの自然周期 or 低刺激の2択の方針では物足りないと思っていることを伝えました。

直近2回、低刺激で1回の採卵でわたしが得られた卵子は2つです。あと13個とるには6回も採卵の必要がある。以前のクリニックでPPOS法を採用した際には4つ取れたので、その差分が刺激法によるものだとするならば、刺激法次第で同一の採卵数を得るための期間は半分になる計算になります。
年齢も考慮すると早めに貯卵しておきたいので、刺激法を変えたい、そのために転院も考えている、と話しました。

 

【説得材料3】治療方針:着床不全の可能性を先に潰しておきたい

仮に胚盤胞を得られたとして、それが着床しなければまた採卵からのゼロスタートに逆戻りしてしまいます。

胚盤胞を1つ得るのにすでに苦労をしているわけですから、着床不全の原因として疑われる項目は、事前に検査しておきたいと伝えました。例えば、ERA,Aliceなどですね。

 

【説得材料4】男性不妊に関するアプローチも継続したい

以前のクリニックでは、夫は男性外来に通っていました。精検結果が思わしくなく、昨年以降は運動率が低下の一途をたどり、年末には「1%以下なのは確かだが、動いているものは数匹しかいないので、”率”としては出せない」と言われました。

ところが、少し結果が向上していたんです。出不精でまったく運動をしなインドアな夫が、年末ごろから運動をするようになり、その影響もあるのかなと思っています。

不妊の原因が男女半々なのだとすれば、男性不妊の改善のためのアプローチが妊娠につながる可能性も否定できません。なのに、今のクリニックでは、男性不妊に関する提案は皆無です。

その辺りまでケアしてくれるクリニックへの転院を検討したいと伝えました。

 

転院先の具体検討状況も伝える

ということで、そのような観点から転院したいこと、すでに転院先としてリプロ東京にあたりをつけていることを夫に伝えました。

間髪入れずに「Web説明会も予約したので週末に聴講するつもり」と伝えます。勢いで押し切るのだ、どりゃー!!

(まぁ、実際に転院するかどうかは、現在のクリニックから今後の方針をどう提示されるかにもよりますけれどね)

 

お金の負担をどう考えるか

臨床データを基に具体的な数字を語ったり、今後の治療について具体的に説明することで、わたしの熱量は夫に伝わったようです。

「うーん、なるほどねぇ」と呟く夫。

 

ここからはもう”NO”と言わせない方向に持っていくしかない。

「経済的負担のことは、ちゃんとわたしの頭の片隅にもある。

 これから家も買わなきゃいけない中で、予算をどちらにどれだけ投下するのか

 そういう視点でも考えたいと、あなたは思ってるんだよね?

 でも、わたしも働いて家計にお金を入れているじゃない?

 仕事はしっかりがんばるし、経済的負担をあなたにだけ背負わせるつもりは

 ないから、もう少し治療を続けさせてほしいな」

とゴリ押しです。

 

嫌な奴だと思われるかもしれませんが、わが家はわたしの方が家計に入れている金額が大きいのです。二人ともフルタイム勤務で、かつ夫はわたしより5つ年下なので、年齢を考えれば自然な話なのですが。

不妊治療は二人三脚なので、夫の納得が得られないままギクシャクしながら進めてうまくいくわけはないのですが、正直に言うと「わたしもお金を稼いできているわけだから、少しわたしの好きなように使わせてくれてもいいのでは」という気持ちはあります。

ただ、そんな言い方しても夫の神経を逆撫でするだけですから、継続させてほしい、協力してほしい、というスタンスで説得するように努めました。

 

話し合いの結果

なんとか、夫から治療継続の合意は得られました。

ただし「まぁ、せいぜい今年いっぱいかなぁ」と釘を刺されました。

「今年いっぱいでわたしの気が済むといいけれどねぇ、どうかなぁ」と言葉を濁しちゃいました。

ここではっきり同意してしまうと「あのとき、今年中っていったじゃない」と言われかねませんからね。言質はとらせないぞー。

 

 

さて。

これからどうなることやらです。

 

とりあえず、この週末にリプロダクションクリニック東京のWeb説明会を予約しました。転院するかどうかについて、具体的に検討を進めていきたいと思っています。

 

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【不妊治療ログ】7周期目凍結確認結果:胚盤胞を得るには何個の卵子が必要か(2021年2月:41歳1ヶ月)

昨日は、1/31に採卵した卵子2つの凍結確認の日でした。

結果を先にいうと、今回も胚盤胞まで育った受精卵はなく、凍結ならずでした。

無念だわ。

 

悔しいしやるせないけれど、落ち込んでも仕方ないし、これまで4回の採卵の結果や、書籍に載っていた数値データ(胚盤胞を得るには一般的に何個の卵子が必要なのか)も踏まえて、今後の治療をどうするか脳内会議してみました。

 

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KLCの体外受精・顕微受精後の流れ

採卵の翌日に、まずは受精ができたかどうかの確認メールが届きます。

メール内のリンクから、パスワード入力画面に遷移し、あらかじめ自分で設定していたパスワードを入力すると、受精結果が表示されます。

 

2つ採卵したうち、ひとつは残念ながら受精せず、一つだけ受精・培養となったことは、先日書いた通りです。

↓受精確認の際の記事

www.sophy365.com

 

そのときの画面はこんな感じでした↓

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そして、採卵から8日後、培養した受精卵が無事凍結できたかどうかを知らせるメールが届きます。

こちらも受精確認のと同様に、Webページでパスワードを入れると、結果が表示される形です。

 

今回の凍結結果

今回は、

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わたしの今の診療方針は胚盤胞まで育ったもののみ凍結する方針です。

5日目で桑実胚、6日目で初期胚盤胞まで達したものの、7日目に成長が止まってしまって、凍結ならずでした。

 

 

ちなみに前回のKLCでの採卵の際の結果はこちらでした。
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ひとつは桑実胚で成長ストップ、もうひとつは今回と同様に6日目に初期胚盤胞、7日目で発育停止しています。

 

うーむ。

 

結果を踏まえて考えたこと 

これまでの採卵数を振り返り

なかなか胚盤胞まで育つのは難しそうであるなと。

 

わたしは転院前の梅ヶ丘産婦人科で2回顕微授精をしています。

1回目の採卵ではPPOS法で5個採卵、1つは空砲で、初期胚を1つ凍結し移植、残り3つは胚盤胞になるまでに成長がストップ。

2回目の採卵も、同じくPPOS法で4個採卵、1つは空砲で、初期胚を1つ凍結し移植、残り2つも凍結前に成長が止まりました。

転院後のKLCでは低刺激法で3個採卵、1つ空砲で、2個とも胚盤胞にならず。

今回も低刺激で3つ採卵して、1つ空砲、1つは受精せず、受精した1つも初期胚盤胞で成長ストップです。

 

これまで4回累積で15個採卵して、うち4個は空砲、残りの11個も胚盤胞まで成長するものはない状態となっています。。

 

臨床データと照らし合わせてみる

先日紹介した「不妊治療を考えたら読む本」からの引用ですが、採卵できた数と、その後の育ちを全体的に見てみた図が以下です。 

  不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」 (ブルーバックス) | 浅田 義正, 河合 蘭 |本 | 通販 | Amazon

 

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これは31歳〜35歳という、まだ卵子が老化する(加齢の影響を受ける)前の年齢の人の卵子を見ています。

良好胚盤胞をひとつ手に入れるには、採卵で平均12.8個の卵子が必要でした。採卵した卵子は全て子宮に戻せるわけではなく、未熟だったものや受精できないもの、培養の途中で発育が止まっていまうものが出てきます。子宮に戻した後妊娠する確率が高いとされるのは「良好胚盤胞」の段階まで成長できた卵子です。

つまり卵子は、「10数個取れてもやっと一人生まれるかどうか」というところです。出産できる卵子の割合が高い30代半ばまででさえこのような割合であり、高齢妊娠の人はこの2倍くらい厳しい状況になると思います。

 

このデータに41歳というわたしの年齢も加味すると、もう少し採卵数を増やさないと、胚盤胞を得るのは難しそうだなぁ、と推測できます。

しかし、2倍厳しくなるということは26個採卵してようやく1つの胚盤胞が望めるということか。どんだけのロングジャーニーなのやら、めまいがするわ〜

 

さらに同じく、「不妊治療を考えたら読む本」からの引用です。

この採卵数には、卵巣刺激の考え方も関係しています。

(中略)

ASRM(米国生殖医学協会)とESHRE(欧州ヒト生殖医学会)が2012年に初の合同会議を行った際も、卵巣刺激の方法が議論されています。

その報告書「ASRMとESHERのベストな診療」によると、体外受精は、注射で複数の卵胞をとる調整卵巣刺激法を用いれば、最小の周期数で最大の成功率を得られるとされました。

そして、1人の子供を得るために必要な卵子の数は「平均25.1個」「38歳未満の女性に限っても6〜16個」とされました

(中略)

刺激法別にみた妊娠率は、卵子の現象が進んでいく最中の30代で特に差が開きます。(中略)30代の人たちが最も卵巣刺激法の違いに影響を受けます。

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日本生殖補助医療標準化期間(JISART)も、これについて同様の調査を実施しています。同組織が認定している25施設で行った比較調査(2010年)によると、凍結胚移植における35〜39歳の1周期あたりでの妊娠率は、調整卵巣刺激が 42.7%であったのに対し、低刺激法(ほぼ簡易刺激に相当) では、20.4%と半分に留まりました。(中略)

この調査では、どちらの刺激法を使うかは無作為に振り分けられたので、元々の条件が同じ集団で比較されています。

 

うーん。

今通っているKLC(加藤レディスクリニック)は自然周期・低刺激が卵子の質を担保するというポリシーのクリニックで、低刺激法(基本クロミッドのみ)で採卵しています。

以前の院ではPPOS法を採用しており、採卵方法の変更によって採卵数は4〜5個から3個に減っています。

年齢的なタイムリミットも考慮すると、KLCが低刺激にしか対応してくれない場合には、高刺激も行えるクリニックへの転院も選択肢に入れた方がよいかな、と思い始めました。

実は前回KLCで凍結ができなかった際に(刺激法と明示的には言わなかったけど)、「採卵数を増やしたりするために、とりうる選択肢はありますか?」と医師に確認したのですが、「まぁ、年齢的に良質な卵子は少ないですから。取れるまで繰り返すしかないですね。そんなに採卵や受精方法に種類があるわけじゃないんで」って言われてるんですよね。(わたしは根に持つタイプなので毎回医師名もメモってます。)

上記データから察するに、年齢と良質な卵子については医師のいう通りでありつつ、刺激法については他の選択肢を示唆されていいようなものだなと思います。

 

上記のデータは2010年、2012年のデータのようなので、現在は技術も向上して多少は事情が違うのかもしれませんが、概ねの傾向としては大きく変わらないような気がします。

 

転院を検討するもう一つの理由:男性不妊へのアプローチ

加えていうならば、我が家は夫の精検結果もあまりよろしくないのですが(運動率が1%未満、精子自体も頭の部分が空洞になっているものなどの奇形が多い)、KLCは男性不妊に対するアプローチや、改善するための提案などが全くありません。

以前のクリニックは男性外来もあったので、その辺りのアドバイスも得られていました。不妊の原因は、男性要因と女性要因が半々ずつと言われていますし、男性側からのアプローチもしていただきたいところです。

 

という点から考えると、リプロダクションクリニック東京へ転院してみようかな、と具体的に検討し始めました。

 

 

今できることは何か

卵子の質を向上させるために:運動?東洋医学?

一般的に適度な運動は効果的とされるので(上記の「不妊治療を考えたら読む本」の浅田義正先生は運動は影響しないという考え方を取っていますが)、昨年秋以降は少しずつ運動を日常の生活に取り入れています。

年明け以降は毎朝30分のウォーキング、加えて時間にゆとりがあれば30分程度の軽い筋トレもしています。

 

体を温めた方がいいというので、秋口以降は下半身を中心に暖かくして、湯たんぽを使うようにしました。その効果か、平熱が平常時・高温期ともに0.2度上がっています。

(単に更年期障害の可能性もあるけど。苦笑)

 

食生活については、もともとあまり外食をする方ではないのですが(中食はあります)、在宅勤務で運動不足から体重が増加気味なこともあって、炭水化物はやや抑え気味に、野菜とタンパク質(脂質の少なめの鶏肉)を意識して撮るようにしています。

 

 

他にできることって何かと考えたときに思い当たったのが、東洋医学。

先日紹介した「今すぐ知りたい!不妊治療Q&A」には、以下のように記載されていました。

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東洋医学的な診断に基づいた漢方治療で妊娠に至ったという報告もあり、漢方薬を用いた全身状態の改善が妊孕性向上をもたらしたと考えられる。

(中略)また漢方薬以外で東洋医学の一つとして考えられているもので、漢方医療と肩を並べる治療法に鍼灸治療がある。海外の文献においても、acupunctureの文字が不妊治療に限らず各診療科領域でもしばしば見受けられる。

胚移植(ET)当日に針治療を併用することで妊娠率が、有意に改善したとする報告もあり、当クリニックでも針治療より、より侵略の少ない低出力レーザー治療を用いて、ET当日に施術を行なっている。

この本を読むまでは正直半信半疑で、鍼灸や漢方薬にお金を投下するよりは、治療としてできることがあるのでは?と考えていたのですが、上記の記述で心が揺さぶられています。

わたしは胚盤胞が育たないので、胚移植の前の段階でつまづいているわけですが、漢方や鍼灸は試す価値があるのかな、と思ったりして。

また、低出力レーザー治療なるものも気になるところです。

あとで調べてみよう。

 

 

胚盤胞が得られた後を考えて:不育症検査

数十個採卵してようやく得た良好胚盤胞も、着床しなければまた採卵からのゼロスタートになってしまいます。

苦労して胚盤胞を得るわけですから、移植後の段階で着床不全となるボトルネックは、事前に把握・解消しておきたいところです。

着床の窓ずれを調べるERA検査、子宮内の細菌叢を確認するEMMA検査、感染性慢性子宮内膜炎検査(Alice検査)も事前に受けておきたいな、と考えていまします。
Aliceは不要かなと思ってたのですが、慢性子宮内膜炎の女性は30%にのぼる(ERA・EMMA・ALICE検査のご案内 | 不妊治療 | メディカルパーク湘南のWebサイトより)と知って、受けてみてもいいかな、と思い直しました。

 

あとは、PGT-Aでしょうか。

PTG-Aについてはまた改めて整理したいと思います。

 

まとめ

転院後の採卵2回くらいは様子見かなと思っていましたが、1回目2回目ともに似たような結果となっていますので、この結果を踏まえて次の診療方針やアクション・選択肢を検討する段階に来ていると感じています。

KLCで上記のような追加検査の情報を収集しつつ、刺激法を変えることが可能かも確認しつつ、返答次第では別のクリニックに転院することも視野に入れて動いていきたいです。

 

とはいっても、不妊治療は二人三脚。夫の同意が得られないとうまく進みません。

上記の結果を踏まえて夫とも話し合ってみたので、次回はそのことを書こうと思います。

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【不妊治療】治療に役立った、不妊治療の参考書籍(内容の紹介つき)

わからないとすぐにググるわたしですが、こと不妊治療についてはネットの情報ってにわかに信じられなかったりします。

ネットって匿名性も高いですし、妊娠したい気持ちを利用してビジネスにつなげるような怪しげな情報もちらほら。

やっぱり安心できるのは書籍の情報なので、不妊治療の基本的な知識を得るために、顕微受精にステップアップするタイミングで、書籍を読むことにしました。


わたしが読んだ不妊治療関連書籍の中から参考になったものを紹介します。

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書籍で知識を身につけようと思った理由2つ

情報を制するものはなんとやら。効率のよい不妊治療はきっと情報戦。

顕微受精にステップアップするときに、通院中のクリニックからの説明が不十分に感じられたことを書きました。

クリニックの対応を一方的に非難しているわけではなくて、質問すれば、もちろん先生も看護師さんも答えてくれるのです。

ただ、如何せん不妊治療を始めたばかりのど素人のわたしは、診察で先生からの説明を受けてもメモを取るので精一杯、その場でその言葉の意図を読み取り、自分の頭の中にある情報と付き合わせて質問するということはできませんでした。

なにせ、自分が何がわかっていないのかも、わからないのです。質問のしようがないわけです。

 

加えて、体外受精・顕微受精というステップになると、普段の生活では耳慣れない医学的なワードも飛び出してきたりします。そうなるともう、何を説明されているのかちんぷんかんぷんでした。

 

体外受精・顕微受精となると、1周期あたりに必要な費用も数十万単位になってきます。ちゃんと理解して、自分なりに納得した上でないと、治療を進める気にならない金額になってきました。

先生に「次回はこうしますが、いいですかね」と確認されても、いいか悪いか、その妥当性も根拠も、わたしにはわからないのです。通常はどんな選択肢があって、その中からその診療方針を採用した根拠が何なのか説明してもらえるといいのですが、なかなか具体的な説明は得られません。

もちろん、病院側もインフォームドコンセント的な観点から、患者に十分な説明をした上で進行するべきだと思いますが、自分の無知を病院側の責にするのも無責任な話で。

 

ちゃんと、不妊治療の基礎を理解して治療を進めようと思ったのが、不妊治療に関する書籍を読み始めたきっかけです。

 

「こころの闇」の解消法も、やっぱり知識と理論武装だと思う。

加えていうならば。

不妊治療って沼です。通院している方はみんな必死だし、投資金額も大きいので、誤解を恐れずにいうならば「よいビジネスになる」はずなんです。不妊治療を継続している人を対象にした、一見怪しげなサプリや、心理カウンセリングのサービスなんかもあったりします。

怪しいなぁとは思うのです。それでも、数百万円を不妊治療につぎ込んでも妊娠できずに、年齢的に治療継続を諦めていく方の体験談もたくさん目にしている中で、数万円のサプリ、数十万の投資で授かれるならば、と思ってしまう瞬間があるのは、とても理解できるのです。

そういった「不妊様に群がる商売」を目にしながら、治療結果が芳しくない状態が続くと、だんだんクリニックに対しても不信感を持ってしまいがちになるんですね。この医師たちも結局金儲けという視点で患者を見ていたりするのかな、と。

いわゆる疑心暗鬼状態。不妊治療の「こころの闇」のひとつだと思います。

 

正直、わたしもクリニックに対して不信感を持ってしまう時期というのは今までに何回かありました。クリニックを信用できないときに、もっと信用できる情報を頼るということができればまだ気持ちは楽なのですが、「信用し切れないものの、クリニックのみに頼らざるを得ない」というのが、わたしには結構なストレスでした。

こういう疑心暗鬼な心理状態や、闇雲に美味しい話に乗っかりそうになったりするのは、無知が原因してると思うわけですよ。ある程度、自分に知識がつき、現実的な判断ができるようになってきた自信がつくと、不安や疑念が湧き起こる頻度は下がるはずなんです。

知識をつけた上で疑問に思ったことは、論理的に質問して解消すれば良いし、回答に信憑性がないと判断したなら、そのときは転院を考えればいい。

いましんどいのは、わたしの無知のためだ。そう考えて、書籍を読んで耐えました。

っていうか、今も進行中なので、過去形じゃないな。

今もなんとか耐え忍ぼうとしてる感じです。笑 

 

 

おすすめの書籍

で、早速、おすすめの書籍です。

 

不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」 (ブルーバックス) (日本語) 新書 -  浅田 義正 (著), 河合 蘭 (著)

不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」 (ブルーバックス) | 浅田 義正, 河合 蘭 |本 | 通販 | Amazon

Amazonで買えます。わたしはKindle版を購入。

 

去年の5月末に購入して以来、何度も繰り返し読んでいます。

医師とのやりとりでに難儀した時に、基礎知識をつけようと思って読んだ本です。

語り口もわかりやすくて、読みやすいです。内容は、臨床データに基づいたエビデンスのある話が土台なので、説得力もあります。具体的な数値データや実績値も掲載されているので、「こういうケースが何割程度の確率で起こりうるのか」などを考えるのにも役立ちました。

6章からなるのですが、簡単に内容を以下に記載します。

 

目次より

1、日本の不妊治療の実態を踏まえた課題

2、妊娠の医学的なメカニズム(基礎的な内容なのに、意外と知らない情報がたくさんありました)

3、不妊検査の最新事情

   不妊治療に関わる検査の種類や、それぞれの検査でどういったことがわかり、

   その結果を踏まえてどのような診療方針が選択肢として考えられるかなど

4、一般不妊治療と卵巣刺激法

   タイミング法・人工授精・体外受精・顕微受精というステップ

   様々な卵巣刺激法の違いと、それぞれのリスクなど

5、体外受精と顕微受精

   そもそも、体外や顕微をすすめられる人とは?

   治療の流れとスケジュール

   胚の評価方法

6、胚の移植と凍結

   独身なら卵子凍結しておくべき?

   2つ移植するか、1つ移植するか

   いよいよ卵子がなくなってきたときの”最終手段”

   40代の胚で妊娠率を上げるコツ

   子宮内膜を妊娠しやすい状態に整える

   妊娠判定

さらっと目を通していただければおわかりいただける通り、治療ステップ基づいて、一連の治療の流れの説明を網羅しつつ、具体的な数値やデータも含めた実例も紹介している、とても参考になる書籍でした。 

各章には、不妊治療に関するFAQも掲載されています。

 

加齢が妊娠にどのような悪影響を与えるかという耳が痛い話も具体的な数字とともに説明されていました。あまり具体的にクリニックで説明してもらえたことがないので、言葉の定義の解釈に迷う「卵子の質」の問題ですね。

一つの良好胚盤胞を得るには平均13個の卵子が必要で、年齢を重ねるほど、良好胚盤胞になる可能性も低下する事実などが、具体的な数値ともに述べられています。

目を背けたくなりますが、良薬口に苦しですね。事実として受け入れないといけないな、と思ってインプットしました。

 

 

 

今すぐ知りたい! 不妊治療Q&A 基礎理論からDecision Making に必要なエビデンスまで (日本語) 単行本 – 久慈 直昭 (著)

今すぐ知りたい! 不妊治療Q&A 基礎理論からDecision Making に必要なエビデンスまで | 久慈 直昭 |本 | 通販 | Amazon

こちらは年が明けてから購入しました。

受け身にならないために、治療の選択肢を理解したい

数打ちゃ当たる理論で同じ治療を続けて妊娠すればよいのですが、もし不妊の原因をある程度突き止められるとしたら、そしてそれに対して対策を講じられるのであれば、それに越したことはないですよね。

2度の顕微受精で陰性が出た後、ひょっとして、そういった診療方針の変更・示唆をクリニック任せにしていてはいけないのでは、と感じていました。

例えば着床の窓ずれがあったのに、それに気づかずに結果につながらない移植をしていたのだとしたら?不妊治療経験者のBlogを読んでいると、妊娠が難しくなる年齢になって不妊原因が特定できて、「前もってあの検査をしておけば」と後悔されている内容のものも散見します。

 

クリニックの医師とやりとりしていて思うのは、こちらから「●●という方法を選択することはできますか」「●●の可能性はないでしょうか」などと質問すれば答えてくれるのです。ただ、こちらから言い出さないと、余程親切な医師でない限り上記のような示唆を受けるのは難しそうだ、と痛感しました。

 

1ヶ月に数百人の通院者を相手にする医師からすれば、患者一人一人のオーダーメイドを考えていたらキリがないのかもしれません(高い治療費を払っているのだから、医学的見地からの示唆出しは担保してほしいところですが)。

なので、自分から積極的な選択・選別ができるようにしたいと考えたことが読むきっかけです。

なかなか胚盤胞に至らない、移植しても着床しないという場合に、何が原因として考えうるのか、どんな選択肢を取りうるのかを、もう少し深く理解しておきたいな、と思ったのです。

 

Amazonの商品説明分

Amazonの商品説明分にも以下のような文章があります。

知識を整理し深め臨床でその知識を使えるように,

さらに不妊治療に携わる看護師・胚培養士・カウンセラー,

あるいはインターネットで様々なことを調べたが何が本当かわからないと悩む患者さんにも,

疑問をQ&Aから見つければ,一通りの知識が得られるように工夫して編集。

 ネットで得た情報が正しいのか、自分で判断できずに困ることは多かったので、めっちゃ刺さりました。

そもそも、本のタイトルが「Decision Making に必要なエビデンスまで」ですよ。医師の説明を受けて、どうDecisionをMakingすれば(ルー大柴)よいかわからずにヤキモキしていたので、ドンピシャです。

 

ちょいとお値段お高めの5,500円です。なぜならば、医療者向けの医学書籍だから。Amazonのレビューを見てみると医療従事者が購入しているケースも少なくない様子。とはいえ、文章は平易でわかりやすく説明されています。

 

また、目次が細かく整理されているので、知りたい情報が記載されているページから読み進めても理解できるように編集されている点もよかった。医学書籍で、それなりのボリュームもあるので、かいつまんで読める構成は、非常に助かりました。

 

目次より

1章:不妊治療を開始するポイント

2章:不妊治療を開始する前に

3章:不妊治療における一般的な検査と治療

4章:生殖補助医療

5章:反復着床不成功の原因と治療終結

6章:不妊治療とサプリメント・代替医療・生活習慣

7章:配偶子提供・代理懐胎

8章:妊孕性温存法

9章:その他、不妊治療に関わる規制・法律など

10章:不育症の原因と治療 

治療開始前から治療のステップそれぞれを説明しつつ、5章ではARTの陰性が続いた場合に何を疑えば良いか、例えばPTGーAや、ERA検査(着床ウィンドウのずれを確認するもの)についても紹介しています。

男性・女性それぞれの年齢が上がることが、妊娠率などにどう影響するのかも、データ・グラフを基に詳細に解説されています。

 

また、不妊治療に関する書籍だと、クリニックで受けられる治療を中心に記載していて、代替医療には触れない内容のものが多い印象があったのですが、こちらではビタミン・サプリ、健康食品、ホメオパシー、漢方・東洋医学、レーザー治療、ミトコンドリア移植などが、妊娠率向上に影響するかといったことが書かれています。どういった症例に適応するかにも触れられているので、自分に必要そうか、そうでないかも理解しやすいです。

以下は抜粋です。

妊娠に向けて有効なサプリメント

 1)抗酸化サプリメント

  ①メラトニン

  ②レスベラトロール

  ③Lカルニチン

 2)DHEA

 3)エビデンスの不明なもの

  ミトコンドリア、プラセンタ、イソフラボンには、

  現時点では不妊治療に有効という明らかなエビデンスはない

 不妊に効果のある健康食品は?

不妊に有効とされるビタミン剤やサプリメントをのぞき、evidenceのある特定の健康食品や「トクホ」は今のところない。妊娠に向けては、健康食品に頼るより、バランスのよい食生活が重要である

過剰摂取に注意するもの

  • 健康によいイメージの大豆製品だが、イソフラボンの一種にステイン摂取で妊娠率低下の報告があり、豆乳を飲み過ぎると月経周期が乱れるとの報告もある
  • ビタミンAは体内で合成できなく。胎児の発達に必須の因子だが、動物性ビタミンAの過剰摂取は胎児形態異常の危険がある。

不妊に関するホメオパシーの効果は?

ホメオパシー専門誌であったり、岩塩や黄体ホルモンなどのレメディが処方され有効であったといった個々の症例報告レベルであり、明らかなエビデンスは認められない

漢方・東洋医学

ラットを中心とした動物実験で、漢方薬投与により黄体形成ホルモン(LH)や卵巣刺激ホルモン(FSH)、プロゲステロン(P4)などのホルモン分泌が促進されるなどの効果が示され、人でも同様な効果が認められている。

漢方医療と肩を並べる治療法に鍼灸治療がある。胚移植当日に進級量を併用することで妊娠率が優位に改善したという報告もあり、(中略)東洋医学は胚質改善の観点からも不妊治療に有効であると考えられる。

 

妊娠できるならば藁にでもすがりたい不妊治療者の心情を利用するようなビジネスも存在する中で、不要なものは不要とバッサリ言い切ってくれるのは、ありがたいですね。

 

 

日本で実現するにはまだまだ諸々のハードルがありますが、配偶子提供(要するに精子提供)、代理懐胎(妊娠を望む不妊夫婦の受精卵を妻以外の女性の子宮に移植する代理母など)についても触れています。

子どもがほしい夫婦であれば不妊治療で望む結果が得られなかったときに検討する可能性のある選択肢だと思うので、こういった情報にも触れているのは、本書が不妊治療について網羅的にカバーしていることの表れだと思います。

 

また、不妊治療で妊娠したのちに気をつけることなどについても、整理して記載されています。

 

わたしは、現段階では自分が欲しかった情報を十二分に得ることができたと感じています。

5,500円の価格は決して高くなかった!

 

今後も、不妊治療についての書籍で、読んでみてよかったものがあれば紹介していきます。

 

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↓不妊治療の記事は以下のカテゴリにまとめています。↓

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適応障害・うつ:その後の治療経過。年末年始で大きな山を越えた。

うつの回復期が続いている。

去年の後半、夏以降から年末にかけて、仕事で新しいプロジェクトを担当することになり、抱えているストレスが大きくなった。

 

↓1年前の回復の経過↓

 

↓4ヶ月前の回復の経過↓

 

 

プロジェクト立ち上げのしんどさ

新規プロジェクトって、クライアントはもちろん、社内メンバーも一緒に仕事をするのは初めてなメンバーばかりだったりする。相手の特性やスキルセットが不明確な中で、積極的にコミュニケーションをとってプロジェクトを先導してくのって、地味にしんどい。

 

「この人はどういう仕事の仕方をしたいんだろう」

「この人にこれを任せていいだろうか」

「結果重視タイプか、プロセスも重視するタイプか」

「どういう伝え方をすると、警戒心を解けるだろう」

ちょっとしたことを伝えるにも頭の中にいろいろな思いが駆け巡ったりする。

 

 

そもそも「このプロジェクト、うまくいくだろうか」という不安がある。

業務役割上は「うまくいくだろうか」じゃなくて、うまくいかせなきゃいけないんだけれど、まぁ不安ですよね。立ち上げ期って不確実な事項が多いし、見通しが立てづらい。

その不安に加えて、先のコミュニケーション課題のようなものが発生するので、頭の中がクエスチョンマークだらけになる。

自分で「まぁ妥当だろう」と納得できた上でとった言動と、「これでいいのかしら、ドキドキ」という気持ちを抱えてアクションを起こすのでは、負荷が全く違う。

 

で、だ。

自分の心に不安の根本が何なのかを問いただすと、わたしの場合には他人にどう思われるか、自分に対する周囲の評価を気にしているのだ。

「プロジェクトがうまくいかないこと」ではなくて「プロジェクトがうまくいかない時に周りにどう思われるか、周りにどう評価されるか」、「この仕事をこの人に任せていいか。どういう依頼の仕方をすればよいか」ではなくて「この仕事をこの人に任せた時に、無茶振りしやがってと思われないか」を気にしてしまう傾向が強いように思えてきた。

時々、他人の言動について「この人はどういう意図でその発言・その言葉選びをしたのだろうな」と考えることがある。気のおけない友人にそんなことを漏らすと「え、それは考えすぎだよ」と驚きながら一笑に付されることも多い。

そうなのだ、わたしはずぼらで大雑把なんだけれど、他人が気にも留めないことを考えすぎてしまったりするきらいがある。

 

チキンだからだと思う。わたしは小心者なのだ。よく言えば慎重派。リスクを大きく見積もるタイプである。

本来、他人からの評価とか本質的な部分ではないし阿呆らしいと頭ではわかっている。でも気になってしまうのだ。

他の人がなんと言おうと、自分がよしと思えるなら、それでいい。揺るぎなくそう思えたらどれだけいいだろう、と思う。わたしは自身の判断や感受性をあまり信頼していないのかもしれない。

 

理由はさておき、なるべく他人に振り回されないように、そして他人の目を気にする自分の感情に振り回されることがないように、他人とわたしの境界を明確にする工夫が必要だな、と思った。加えて、他人はわたしが気にするような細かいことを気に留めないらしいので、どこから先については「考えすぎ」と判断できるようなラインも引いておきたい。

 

 人にどう思われているかを推測して傷つかない。自他境界線を引く訓練 

仕事を進めるにあたって、決定しなきゃいけないことは山ほどあるので、他人にどう思われるかといった些末なことに脳味噌のリソースをとられたくない。

もちろん、関係者とは摩擦なく気持ちよく仕事したいし、なんだったらモチベーションを上げて取り組んでほしい。プロジェクトの成否ってメンバーの意識によって左右されるところも大きかったりする。

でも、言葉にして発信されたメッセージは「意見」として受け止めるべきだけれど、不機嫌そうな態度で発せられる「Yesとは言いたくない」みたいなニュアンスを拾い上げているとキリがなく、こちらも疲弊してしまう。 

そのことにようやく気づいた。

でも、これまでそういったことを気にしながら仕事を進める「癖」がついているので、一朝一夕にはやめられない。

 

で、ぐるぐると不安がとぐろを巻いていることに気づいた時に、悩みの種が本当に検討に値するものなのかを改めて考えられるように、PCの画面に以下の一文を表示することにした。

 

  1. 他の人の感情を推測しない。明示的に言葉にして発信されるまではスルーしてよい
  2. 気づいたことにすべて対応しなければいけないわけではない。気づかないフリもあり
  3. 信義則に則ってどうあるべきか → それは現実的か →自分はどうしたいか を考える
  4. 振れる仕事はまず振る。振っていいか考える時間は無駄。振って断られたら対応を考える。

新卒かよ、とツッコミが入りそうなアレであるが、いっぱいいっぱいになっていると、全てのことにきっちり対応しなければいけないような気になってしまいがちなわたしなので、5分、10分同じことで悩んで解決策が見つかりそうにない時は、 上記に立ち返る

これを徹底することで、随分と悩むことが減った。

 

悩ましいのが、「3.信義則に則ってどうあるべきか → それは現実的か →自分はどうしたいか」の項目。

わたしがクライアントのやりとりの窓口に立っていることもあり、クライアントの温度感や現場感覚が薄い社内メンバーからは、わたしの判断とは異なる意見が上がってくるケースもあった。加えて、クライアントから現実的ではないオーダーが届いたりすることはしょっちゅうなわけで。

こういう時に、今までのわたしは「自分の意見だけを通して悪く思われるのも面倒だから、いまいち納得いかない部分はあるけれど、この人の意見も少し組み入れておくか」といった中途半端な判断をしがちだった。自分の判断に自信がないのだ。自分の判断が間違っていたら、「すみません、間違ってました」と謝れば済む話なのかもしれないが、「全体最適」というポーズで、全面的に責任を引き受けることを避けてきていた。

でも、これはよくない癖なのではないか、とようやく思い至った。

一旦自分の意見にベットして周りを説得してみて、結果いまいちな判断だったと思い直したら誤って訂正・軌道修正する。そういったやり方を体に覚え込ませないといけないな、と考えて、今回は自分がどうしたいかを優先して判断するように意識した。

やりたくないことをしていても、なかなか結果につながらない。結局プロジェクトを進行していくのは自分なのだから、「納得いかずに取り組む」よりも「自分がやりたいことを成功させるように取り組む」ほうが結果につながりやすいはずだ。

 

結局、この判断は大正解だった。

最初は多少の摩擦が起こりギクシャクしたりもしたが、こちらの主張に妥当な根拠を示すことができれば、異なる意見のメンバーにも大方納得してもらえる。もちろん、各メンバーの意見が妥当な時には、それに従う。そういうやり方をしていると、次第に周囲も「まぁ、あいつがそういうなら、一旦それで進めるか」と思ってくれるようになったのかもしれない。次第に摩擦も減っていった。

しかも、このやり方には、プロジェクトメンバー各人もそれぞれ意見を主張しようとする空気が醸成されるという副次的効果もあった。思ったことは言えばいいじゃん、三人寄れば文殊の知恵、思ったことを言わずにあとで「抜け漏れてました」が発生するより効率がいいよね、というノリである。

言語化する手間を惜しまない。これって他人と協働するためにとても大切なことだと、改めて痛感した。

 

 

感情をじんわり漏らす。闇に落ちる前のセーフティネット「共感」を得るために。

一方で、クライアントとの関係について。

クライアントは誰しもある程度わがままである。ただ、そのわがままが現実的に実行するのが難しそうな類いのものだったり、納期とクオリティといった本来トレードオフになるもの無条件の向上を要求されたりしても対応できない。

ビジネスなので、トレードオフ嫌ならば金を積めという話になるわけで。この辺りの交渉に非常に難儀した。

 

この、クライアントの期待値コントロールや折衝のような部分は、以前適応障害で休職に至った際にもストレス要因として大きかったポイントである。

休職して退職に至った経緯もあるので、(現在は休職中に転職活動をして内定を経た会社に勤務している)新規プロジェクトを軌道に乗せ、クライアント折衝もそれなりにうまくこなすことで、自分の自信を回復できるのではないかと考えていた。

↓3年弱前に、休職に至った経緯↓

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特に、プロジェクトメンバー全員が集まる定例会で名指しで詰問されるのは堪えた。「●●さんはいつも「難しいかもしれないです。」と一次回答する。やれる方法を考えるのがあんたの仕事だろう」と毎週罵倒されると辟易したし、病みそうになった。

 

その上、内心ではクリティカルなダメージを食らっていても、わたしは飄々とこう答えてしまったりするのである。

「不信感を抱かせてしまったならば申し訳ありませんが、こちらも詳細を伺わずに「できます」と即答することは難しいのです。なので、現状の進捗も鑑みると「できない可能性もある」ことはご承知おきいただきたいんです」

狼狽えているわたしの姿を見せることでメンバーを不安にさせたくないという思いもあるし、わたしにもプライドがあるのだ。言われのない批判はされたくない。

後に聞いたことだが、メンバー達はそういったやりとりを毎回「ひょえー、このクライアントほぼヤクザじゃん。」と思ってはいたらしい。一方で「でもあの人は毅然とした態度で返してるし、まあ大丈夫か」とらそんな深刻に捉えてなかったことを知った。

しんどい時はしんどい、とプロジェクトメンバーに伝えられることも必要だよね。そういう辛さみたいなものに共感して発せられた「いや、やれるだけのことやってるっしょ、大丈夫」といった言葉に救われる瞬間は確かにあるわけで、自分の心のセイフティーネットとして自分の感情もじんわり漏らしておくことは必要だな、とも感じた。

共感・共有してくれる人がいないと「なんで自分ばかり」というような惨めな気持ちになりがちだけれど、そこで共感を示してもらえるだけで、不思議なことに踏ん張りが効いたりするものなのだ。

 

 

結局、クライアントとの調整は、要望の一部を受け入れ、一部は来期の予算を確保して対応する形で、クライアントの承諾を経た。要求に応え切れてはいないが、来期も発注する気があることを表明してくれたのは担当者として喜ばしいかぎりだ。

何段階かに分けての交渉、クライアントのメンバーへの根回し、自社内での上席の説得やら何やら面倒だったけれど、そういう立ち回りや段取り含めて完遂できたことは、自信回復の柱になった気がしている。

 

 

年末の大きな谷と再発の兆し

「苦労しましたが、無事山を越えました」的に書いたが、年末は再発の兆しも顔を覗かせていた。仕事をしていて、無茶なオーダーを回避するたびにクライアントからの名指しで批判されている時期は、自信も自尊心も切り裂かれていたためか、仕事後になんとも言えない感情になって涙が溢れることあった。

夜は眠れなくなり、睡眠薬の処方は倍に増やした。それでもすんなりとは寝付けなかったりしたし、とにかく夜中に1、2時間おきに目が覚めた。早朝4時に目が覚めると、そこからはうつらうつらできる日もあるが、そのまま寝付けなかったりもする。入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒のトリプルコンボ。

夢の中でまで仕事をしていたし、起きている最中、土日も少し時間ができてぼんやりしていた時に無意識で仕事の不安を繰り返し考えてしまっていた。反芻思考ってやつである。ネガティブなことを反復して考え自分に刷り込むことで、かえって事態が重大で不安なものに思えてくる、負のスパイラル。

 

ストレスフルな状況に加えて良質な睡眠が確保できていないために、日中に頭が働かず、ぼーっとしてしまうことも増えてきた。自分で話していて、何を話していたのかがよく分からなくなってしまったり、短期記憶が悪化したり。要は脳味噌のワークメモリが足りていない状態。

休職する前にも同じような状態が続いていたので、「このままだと再発する、むしろすでに再発しかけているかもしれない」という自覚はあった。そして、メンタルクリニックの主治医にもそのような体調の変化を伝え、「このままのペースで仕事を続けると、いつ倒れてもおかしくないよ」と忠告された。

 

ゆっくり時間をかけて、ようやくここまで回復してきたのである。ここで再び倒れてしまって、また振り出しに戻ってしまったら堪ったものではない。

早速、困った状況にあることを直属の上司に伝えたが、あまり真っ当なアドバイスは得られなかった。これまでも上司に相談したことはあったが、現場感を考慮した助言が得られたことはなかった。わたしが知りたいのは総論や理想論ではなく、あるべき姿に現実を掛け合わせた時の妥当な着地点と、クライアントにそれを納得させるための道筋だ。今回もなしのつぶてだった。

いい年なんだから上司の指示など仰がずに自分で判断すべきなのかもしれないとも思った。この際、具体的な指示を求めることはやめて、単純にプロジェクトの増員を依頼してみたりもしたが、10日後に上司に増員調整の進捗を尋ねた時に「いや、特に何もしていないですよ」と回答された。本当になんの調整も試みてくれていなかったらしい。

え、なんで。それマネジメントの仕事でしょ。

それを知った時には、心が折れる音を聞いた。ひどく乾いた、軽い音だった。

 

これ以上、直属の上司に仁義を通す必要もなかろうと、わたしはさらに上の部門長に相談した。「今わたし一人では捌き切れないボリュームの調整事項を抱えています。メンバーを追加してください」

秋以降、同じチーム内に2人も休職者が発生していて、それでなくとも年末なので社内のリソースは全体的に逼迫していた。それでも、部門長はすぐにメンバー追加の調整を計ってくれた。

こういう時の対応のフットワークの軽さは、ヘルプを訴えている側からすると非常に心強く重要なものだった。その迅速さに「わたしが抱いている危機感が伝わった」と実感したし、支援してくれようとしていると感じたことで「あと少し頑張ろう」という気持ちも湧いた。

 

そういう事情も踏まえつつ、何が一番よかったかというと、年末年始にたっぷりと休めたことだった。

いわゆる寝正月。夫の実家に帰省したので、持ち前の神経の図太さでとにかく眠った。時折会話に参加しつつ、うつらうつらし続け、美味しいものを食べ続けた。

義両親は内心「なんて嫁だろう」と思ったかもしれないが、他人になんと思われようが気にしない精神を身に付けたわたしは、義両親の思いより現在の自分の体調重視である。

 

そして実際、年末休暇に入って数日で、わたしは熟睡できるようになった。夜中に目が覚めることもない。日中、時間を持て余すと仕事のことを考えがちになるので、年内は大掃除に精を出した。朝から晩まで家の中の片付けをして、手足を動かす。それもよかったのかもしれない。

 

年明け仕事を再開したタイミングで、また不眠がぶり返すのではないかとも思ったが、年が明けるとクライアントの態度もなぜか軟化して、先に書いた通り、来期に向けた合意を交わすことができた。

日々何かしら想定外の事態が起こったりもするが、それも許容範囲。年末のように切迫した状況でもなく、かといって暇を持て余して自分の存在価値を疑ってしまうようなこともなく。程よく忙しい今は、凪の海のようだなぁと思う。

 

 

振り返ってみると

ようやく、何となくではあるけれど、適応障害にかかる前と同じような仕事ぶりができている自信がついてきた。最初に適応障害で休職したのはもう4年前になるのだし、「同じ」ことに安堵せずに前進していたいところだけれど、この際欲は出さない。

健康に働き続けるだけで及第点なのである。

 

加えていうならば、わたしは昨年から不妊治療を初めて、「仕事と不妊治療が重なった時には、基本的に自分の個人的な思いを優先する、つまりは治療を優先する」と個人的にルールを決めていた。仕事を第一優先にしない、わたしの人生を楽しくするためには、仕事が第一優先であってはならない、そう自分に何度も言い聞かせてきた。

これも仕事が辛い時期を乗り越えるための土壌として、大きかったと思う。「でもまぁ、仕事のことだしな。やらなきゃならないことを淡々とやって、できないことはどうしたってできないのだし。ビジネスだし」と自分を納得させた。

 

そして「働く」ということに関しては、この会社の社員として働き続けるべきかという点で、少し腑に落ちていない部分は残っている。

今のような、繁忙期になると1日仕事だけで力尽きる生活を長期間にわたって続けていく働き方を、5年後には脱していたいと単純に思うのである。

 

この先1年で不妊治療の成否にも目処がつきそうだし、今年と来年は今後5年、10年スパンでのこの先の自分の働き方をぼんやり模索してみてもいいかもしれないな、などと思っている。

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その後の治療経過。

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随分とBlogから離れていた。

 

うつの回復期が続いている。

ときどき、調子の悪い日もある。
とはいえ、ずいぶんと調子は良くなってきた。

なんだか仕事に集中できない日や、物悲しい気分になる時は健康な人にもあるわけで、自分ではその範疇に収まっていると思っている。



仕事は、コロナの影響で3月から在宅勤務が日常となった。

以前と変わらず1日に何度か打ち合わせはあるものの、ほとんどのやりとりはオンラインで行われる。月に1、2度出社やクライアントとの対面での打ち合わせが発生するかな、というペースである。

 

 

仕事では、以前のチームマネージャーとの相性があまり良くなかったこともあり、同じ部内の別のチームへの異動希望を出し、7月から異動が受理された。

在宅勤務の中でなので、異動の実感はあまりないのだが、新しいプロジェクトのPMを務めながら、日々バタバタと過ごしている。

新規プロジェクトへのアサインが重なった9月、10月は、プロジェクトの産みの苦しみによる「眠れない日々」を存分に味わった。
もちろん、「眠れない」といっても、深夜まで仕事しているわけではない。

諸々の調整事項・交渉などが錯綜する中で、プロジェクトの先行きの見えなさによる不安とストレスが原因で、深夜覚醒や早朝覚醒を繰り返した時期もあった。

でも、それも何とか乗り越えて、大きく体調を崩すことはくここまで来れている。

 

仕事を通しての、自己肯定感と自身の回復

前職でも前々職でも、マーケティング関連システムの活用コンサルティングや、導入プロジェクトのPMを担当してきた。

前職では、PMとしての業務を全うできずに適応障害・うつによる休職、退職となった。そんな経緯もあって、これまでは常に「今の会社で”自分の裁量でPM業を全うできた”という成功体験を積まなければ、職務に対する恐怖心や、シュリンクした自己肯定感を克服できない」という考えが常に頭の中にあった。

大概のプロジェクトでそうであるように、今担当しているクライアントもそれなりに癖があり、それなりに我が儘ではあるのだが、今のところはクライアントの満足感も悪くない状態で進行できている。

 

PMという職務上は、最低限の当たり前のことなのかもしれないけれど、わたしにとってこれは、とても重要な意味を持つことだ。

小さな成功体験や自信につながる経験が自らの傷を癒してくれている。

たとえプロジェクトで満身創痍になりながらでも、その傷を治しながら前進して、それなりに悪くない着地点に到達できること。

そんな日々の繰り返しが、自己効力感や自己肯定感を育んでくれて、何事に対しても「わたしにはできないのではないか」と及び腰になってしまう不安を薄めてくれていると思う。

 

とはいえ、例えば4年ほど前、適応障害になる前のように、夜中の3時まで平気で働いて翌日も元気に出勤する、ということは全くできなくなった。

それが、病気によるものなのかは分からない。年齢的にも40代を迎えたし、体力の低下によるものかもしれない。
でも、以前のように働かなければと考えることがそもそもなくなった。良し悪しはさておき、わたしの考えが「変化した」のだと思う。
つい1、2年ほど前までは「病前に戻りたい」と思うことが頻繁にあった。毎日仕事やら何やらにときめいて、やりたいこととエネルギーに溢れていて貪欲だったあの時期を思うと、とても日々がきらめていたと思うし、いまでも時々その眩しさが懐かしく恋しく思えることはある。

でもふと気づくと、同じような働き方、動き方をしたいと思うことは、ここ1年ほどでほとんどなくなっていた。自分が理想として追い求める姿と、現実の自分との間に解離があることは、わたしにとって大きなストレスだった。それがなくなったという意味で、好ましいことだと思って受け止めている。

 

自分の直感に自信が持てると、決断疲れが減ってが楽になる

加えて、忙しかった9月ごろと、いま現在のわたしも、精神的に大きく変わったと思う。

人の顔色を伺ったり、人の意見に左右されたりすることがずいぶんと少なくなった。変わったというよりは、ストレスを減らすために「意識して変えた」という方が正確かもしれない。単刀直入にいうと、自分本位になったと思う。

仕事以外でも言えることだが、他者と関わり合う以上、そこには意見や見識の相違や摩擦が発生する。

そういったシーンで「自分では何となく違うと思っているけれど、声の大きい人の意見に流される」ということがなくなってきた。

物事がうまく進まない際に、自分のやり方を疑って、関係者の助言を求めそれに従うことも多かったのだが、関係者が自分よりも事態を把握した上での判断ができる保証など何もないのだ。

もちろん、こまめに相談の機会を設け、皆の意見を拾うことは大切なのだが、他者の意見に従って行動した結果を引き受けるのは自分なのだから、自分が納得のいく決断をしないと後悔が残る。

特に、わたしが所属する組織では「船頭多くして」という場面も多々あり、意見が発散して収集がつかないまま、方向性を見失うという状態が散見されていた。

そんな中で、他者の意見に従ってうまく運ばなかった物事が、自分の直感や考えに従って行動したらスムーズに解決するような場面もいくつか経験し、それを通して「自分が正しいと思えることをしよう」と自然と思えるようになった。

わたしは、わたしの意見や直感、判断にもっと自信を持ったほうがいい。実体験を通してそう思えるようになったことは、とても大きな収穫だった。

そして、他の意見を確認するものの、良くも悪くも他人に期待をしなくなった。

 

日々は小さな決断の積み重ねで、その小さな決断のたびに迷いが発生すると、当然消耗する。そんな時に、(もちろんひとつひとつ、真剣に検討・吟味するんだけれど)自分の判断を信じることができるだけで、ものすごくストレスは減るのだ。

 

そして、ひとたび合意をとって決断したら、他人がどう思うかはあまり気にしないこと。わたしの知らないところで誰が何を思っていようが、何を言っていようが気にしないこと。
人の気持ちを慮ることは大切だし、相手の気持ちに配慮したコミュニケーションは重要だけれども、メンバーの心情を優先して判断ができるシーンは非常に少ない。そういう場面では、(必要な配慮はした上でだが)極論、伝えようという意思を持って発信された情報以外は、拾う義理はないのだ。

意思決定をせず、責任を引き受けるつもりもないのならば、黙って応援し見守ってくれ、くらいの気持ちでいること。

そう考えられるようになることで、いろいろな決断が格段に楽になった。

 

 

時期を同じくして、気が進まない他人からの依頼ごとを容易に引き受けることが減った。

これも、考え方の根底は一緒で「自分の直感や判断に従う」ということなのだと思う。

自分を大切にしてくれる人のことは大切にする。そうでない人からの依頼はほどほどにスルーする。

それは、自分を大切にすることの延長線上にある行動で、断ることに罪悪感を覚えなくても良いと思えるようになった。

この考え方の転換だけで、とっても生きやすくなる。日々、いろいろな物事と折り合いをつける中での、自分の心の中の摩擦係数が減った感覚がある。

 

 

これから

いま現在の服薬は、ジェイゾロフトとマイスリーのみ。

2月ごろから不妊治療を始めたこともあって、妊娠への影響が少ないこの2種類の薬に落ち着いている。

たまに、採卵と受精卵移植の間に少し効きの良い睡眠薬を頓服的に服用することはあるが、サインバルタなど胎児への影響の臨床研究が進んでいない薬剤の使用は止めている。

 

これからのわたしがどこに向かうのかは、まだ分からない。

今は不妊治療と仕事を全うすることに精一杯なのが、正直なところだ。

 

コロナの影響を受けて、外出の機会は格段に減ったし、知人・友人と会う機会もめっぽう少なくなった。自由になる時間で何か楽しみを見つけて活動するということも少なくなってしまった。
音楽も、植物も変わらずすきな気持ちはあるのだが、アナログレコードに針を落としてゆっくりと聴きたいという欲求はあまり湧かなくなったし、植物の手入れもずっとおざなりなままだ。

 

在宅勤務で運動量も減ったため、筋力・体力が減る一方で、気づけば体重のみが増加している。時折、こころに霧がかかったように感じる時には、自宅や近隣で思い切り体を動かして汗を流す。

目下の楽しみといえば、夏頃から始めた筋トレやエクササイズ・ストレッチで自分の体がどう変化していくかを観察するというささやかなもの。そして時々、幸運にも子どもを授かれた後の暮らしを妄想することくらいだ。

もう少し、何か打ち込めるような物事、考えると心躍るような何かがあるといいのかな、と思ったりもする。でもそれが何なのかは、まだよく分からない。 

 

これからどこに向かうとしても、そんなに悪い場所ではないんじゃないかと思っている。

そう思えるようになったことが、何よりの回復の証なのだと思う。

回復を実感した1月、2月(うつ、その後)

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新しいプロジェクトのPMを担当することになり、11月後半くらいから仕事が慌ただしくなった。
入社して半年が経過したとはいえ、知らないことばかりの環境の中で、他部署との調整や、関係会社との契約、プロジェクトの立ち上げなどに追われて平日は帰宅するとぐったり、12月の週末は眠ってばかりいた。

 

年末年始を実家でゆっくり過ごし、東京に戻ってきてしばらくしたころ、40歳の誕生日を迎えた。

だからと言うわけでもないけれど、「これからのわたしの人生を、どのような方向に進ませるのも自分なんだよな」という当たり前のことを考えたりした。

 

かといって、大きくて具体的な目標というものは頭に思い浮かばなかった。

できれば、仕事はずっと続けたい。

でも、仕事ばかりにならずに、趣味や日々の暮らしに割く時間も大切にしたい。

日々ここちよく、なるべく笑って、少しずつでいいからより良い方向に進んでいっているという実感を持って生きていきたい。

粒度の大きな物事を考え始めると具体性を欠くものになってしまうので、ひとまず理想の一日を書きだしてそれを目標にしてみることにした。朝は7時半に起きる、ちゃんと朝食をとる、通勤時間を活用して英語のPod Castを聞く、帰宅したら疲れていても湯船につかる、風呂上がりにはしっかりと肌のケアをしてリラックスする、寝る前にストレッチをする、23時には就寝する、とか、そういう他愛もないことである。

そして眠る前に、「理想の一日」に照らし合わせて今日はどんな具合だったかを振り返る。

 

そういうことを繰り返しているうちに、徐々に気分は落ち着いてきて、やりたいことが増えてきた。「やりたいこと」といっても、これまたたいしたことではない。

冬のセール中のうちにストールを買い足したいとか、レコードが欲しいとか、部屋をきれいにしたいとか、そういったレベルのことである。やりたい気持ちに背中を押されて行動しているうちに、次第に週末の過ごし方が活動的になってきた。
昼前に街に出て買い物をして、カフェでコーヒーをすすり、本屋によって帰る。そんな週末の過ごし方をするようになってきている。

 

少し前までは、週末にわざわざ電車に乗って外出するような気力はなかった。

買い物もさほどする気が起きなかった。もちろん、必要に迫られてものを購入することはあったのだけれど、自分の気に入るものを探して歩きまわるなんてことをする気にはならなかった。(そもそも、たくさんある選択肢の中から一つ最適と思われるものを選んで購入する、その思考プロセスも面倒くさく感じられていた)

 

 

仕事は、相変わらずそこそこ忙しい日もあったりするが、週末には家で食事を作る気力が湧くようになった。

 

他人にどう思われてもいい、という開き直りが出てきたところもある。

自分がこうしたい、こうあるべきと思うことと、他人に期待されるものがぴったりと合致することなど、そうそうない。なので、合致しないこと自体にストレスを抱いても仕方がないのだ。自分はどう考えているか、どうしたいか、そのために、相手にどうしてほしいかを言葉を尽くして伝える。それで相手が動いてくれないのは相手側の判断があってのことだし、それはそれで仕方ないと思えるようになった。

薬は一部減薬になったものの、いまも飲み続けている。

それでも「ここからわたしは回復していけるな」と思えるようになった。12月までは「わたしはまだ鬱状態から完全に抜け出せていない。いつになったら、このトンネルから完全に抜け出せるのだろうか」と悶々とする日も多かったのに、不思議だ。

 


個人的には、細かく日常のあるべき形をリスト化して、それを着実にこなすようにしたことが効いたように思う。ちゃんとお風呂に入ると疲れが取れる、ちゃんと肌のケアをすると肌の調子がよくなる、毎日英語を聞けばヒアリング能力が上がる。些細なことではあるけれど、自己効力感の積み重ね。

 

加えて、仕事の場でも小さな蓄積の効果が現れたことも、良いように働いたかもしれない。

プロジェクト立ち上げ時に、指示を素直に受け入れてくれなかった若手がいた。報告しない、連絡しない、相談しない、という三拍子そろったメンバーである。引っ込み思案なのかもしれない。

彼に対してわたしは、一貫して「わたしはPMという立場上、どうしてほしいかを言語化して君に伝えなきゃいけない。だからときどきは無茶なことも言うかもしれないし、君の考えと合致しない主張をするときもあると思う。合致しないときは、ちゃんと主張してくれていい。ただし理由も添えて説明してほしい。」という立場を取っている。
彼はエンジニアとして、わたしには理解できない類の知識を持っている。だから、その部分についてわたしの理解が至らないがために無理な要求をしようとすることがあれば、それを指摘してほしいのだ。ただ、プロジェクト全体の方向性については話しあった上で、わたしが判断を下す。そして一度判断がくだったら、それには従ってもらわないとならない。

意見が食い違うと不機嫌になり、自分の意見の誤りを指摘されると拗ねる。人間感情の複雑さを垣間見せてくれていた彼だが、彼の業務が回らないときにフォローしたりを重ねているうちに、ようやく素直に意見を聞き入れてくれるようになった。
自分が根気よく働きかければ、チームもまとまっていく。これも、自己効力感に大きくつながった。

 

加えて。
鬱まっさかりのころに、わたしを思い悩ませてた「出産問題」。これにも手を付け始めた。
もともと欲張りな性格なのである。仕事は続けたいし、子どもも育ててみたい。休職中に通っていたリワークでも、そのスタンスを崩さないわたしは、「諦めなきゃいけないこともある」「あなたは欲張りだ」と指摘された。鬱状態だった当時は、仕事復帰をしたり転職をしたりして、新しい環境で体調が安定する保証はないし、もう出産は諦めないとならないかもしれないなと思ったこともあった。

年齢的に出産を考えるリミットも近かったので、仕事復帰をせずに出産を優先することを検討した時期もあったが、出産を理由に仕事を辞めたとしたら、子供が大きくなり自分の時間を持てるようになった頃に後悔するのではないかと思って、最終的に仕事を優先し、転職することにした。今すでに存在している命「わたし」がある程度幸せでないことには、生まれてくる子どもだって幸せにすることはできない。

 

なんやかんやで転職し、そのまま後回しにしてきた出産問題だったが、体調もずいぶんと落ち着いて、不調の波も小さくなってきているので、今年の2月から不妊治療を始めた。

やっぱり子どもがすきなのだ。もし幸運にも子どもを産むことができたら、わたしが想像する100倍は大変な日々になるのだろう。それでも、育ててみたい。まっさらな瞳でものを見て、世界を一から覚えていく様を、側で見守ってみたい。その想いは変わらなかった。
授かるかはわからないが、授かりたければそのために行動しないことには仕方がない。

授かったとしても授からなかったとしても、やるだけやったという思いでいたい。そんなこざっぱりとした気持ちで不妊治療を進行している。

 

 

こうして振り返ると、わたしはこの2か月でずいぶんと行動的になっていて、適応障害になる前とさほど変わらないレベルの気力・体力まで戻ってきているように思う。

1月には夫から、「以前とほぼ変わらないレベルまで来たね。よく笑うようになった」と言われた。

 

まだ多少の波はある。

でも、無理のない範囲で少しずつ自分にできることを増やして、心地よく暮らしていきたいな、と思う。

2018年8~9月のこと(適応障害からうつへ、認知行動療法を受けられる病院探しから、リワークプログラム説明会へ)

2018年の8月に日記を更新してから、ずっと更新していなかった間のこと。

正直、一番調子が悪かったころのことはぼんやりとしか記憶にないのだが、書き綴ろうと思う。

 

2018年の5月の連休明けに適応障害を再発し、休職に入ってから調子が上向きになったりしながらもなかなか「復帰しよう」という気も「復帰できそう」という気も起きなかった。

 

日中は近所のカフェに行き、基本的には読書をしたり、日記を書いたりして過ごしていた。

5月に症状が出たころには、資料内の文章はもちろん、打ち合わせで顧客が話す要望事項が全く頭に入ってこない状態で(入って来ても素通りしていって、何も脳みそに残らないような感覚)、6月中は本を読む気が全くせず、7月前半に本が読めるようになったものの、読書のスピードがそれまでの自分と比べて著しく遅くなっていた。
読書が好きだった私にとっては、これは結構ショックな出来事だったのだが、8月に入ると以前と同程度の速度で読書ができるようになって、安堵したと同時に、とてもうれしかったのを覚えている。

 

このころに読んでいた本はこんな感じ。

 

     

 

自分の考えや感じたことを伝えて、交渉する力がないのかなと振り返り、アサーション関連の本も読んだりした。

 

 

 

8月になると、医師から「復帰する自信がないのであれば、リワークプログラムに通い、認知行動療法を試してみてもいいのではないか」というようなことを言われた。

 

「認知療法」というものはわたしも知っていて、(母が統合失調症で、統合失調症の家族を抱える方の集まりに参加していた時期があり、その中で認知療法が効果的だと知り、認知療法に関する本は数冊読んだことがあった)試してみたいとも思ったが、リワークへ通うことの、心理的にハードルが高かった。
リワークに通うと、通常3か月ほどは通わないと効果がないこと、そうなると会社への復帰が大幅に伸びることになる。

かつ、リワークという何をするのかもよくわからないところに放り出されるのも嫌だった。


それで、8月中に「復帰への自信」をつけようと、こんな本まで買ったりした。

 

 


日々の生活の記録を書いて、毎日簡単な脳トレのような問題をこなすもの。(計算問題とか間違い探しとか)

計算問題をやることが自身の復帰につながるとも思えなかったし、仮にこの計算問題が解けたところで、復帰して大丈夫という基準になるとも全く思えなかったけれど、それでもなんとなく続けていた。


8月の診察で復帰する自信が全く湧いてこない旨を主治医に伝えると、「復帰するにしても、再発防止の意味で認知行動療法を受けてみたほうがよいように思う」と言われた。そこで、職場復帰と並行して認知行動療法を受ける方法がないか検討してみることにした。

 

基本的には、ネットで検索し、認知行動療法のメニューを掲載している病院に電話をかけて、費用感や要する期間などを確認する形での病院探しである。

だいたい保険診療がきかないところばかりで、そうすると1回の通院・カウンセリングで15,000円~20,000円ほどにもなる。中には大人気(という表現は不適格かもしれないが)で、いまから予約したとしても受けられるのが数か月先になるという院もあった。
保険診療可能なところで見つかったのは国立病院機構 東京医療センター。

電話で問い合わせをした際の対応も非常に丁寧で安心できた。電話では、原則、東京医療センターの精神科に転院する形だと説明されたが、実際に受診したところ、現在の病院に通院しながら認知行動療法を受けることも可能とのことだった。

ただ、集団認知行動療法の開催は月曜日で、「復帰しても並行して療法をうける」ことはできない。

加えて、保険診療がきかない病院の診察料の高さには気が引けてしまい、リワークに通うことを検討するようになった。

余談ではあるが、休職手当は毎月支給されており、かつ日々の出費は近所のカフェ代と生活費、少しの贅沢が本代くらいなので、生活の心配は特にいらなかった。べつに過去の貯金を切り崩して、保険外診療を受けることもできた。

でも、うつ状態のときというのは、自分がお金を使うことさえ申し訳なくなるもので、特にわたしは「働ないていない」状態に対する罪悪感が強く、そんな状態で高額な診療を受けるなんてとんでもない、という思考回路になっていた。

 

このあたりから、状態がまた悪くなる。

毎日そわそわと気分が落ち着かなく、何かをしていないといられないのに、何をしたらよいかわからない、何もせずにぽやーんとリラックスすることもできず、何かに急き立てられているような気分になることが増えた。特に夕方~夜になると焦りの感情が膨らみ、とにかく散歩をしていた。

 

主治医に進められたリワーク施設の見学は月に一度だった。
見学に来ている人の性別、年齢は様々。うつの他、双極性障害やADHDなども受け入れている施設だった。
簡単にリワークプログラムの概要の説明を受けた後に質疑応答の時間があり、施設内を案内される。施設内には、利用者が作った折り紙やら粘土やら、工作の作品が飾られていて、正直自分がそんなことをしなければならないのかと思うとゾッとした。案内された部屋には畳の部屋もあって「プログラム中に体調がつらくなった時などは、プログラムを退出して、この部屋で少し気分が落ち着くまで休むこともあります」と施設の方が説明しているのを聞いて、自分のことは棚に上げて「人前で泣いてしまう人が通うのか」などと思った記憶がある。

プログラムの説明を聞いても、具体的にどんなことをするのかは想像がつかなかったし、それが自分にとって必要なことなのかは、もちろんわからなかった。

その場で申し込みをしてもよいし、後からの申込でもよいとのことだった。リワークが何なのかが全く分からないまま、申込用紙に名前と連絡先を記入して提出した。

たくさんの病院に電話をかけたり、いろいろ検討した結果として行きついたのがこの説明会なのだ。本来であれば、リワークプログラムを専門としている施設をいくつか見学した上で検討してもよいのだろうが、もうそんな気力もなく、さっさと決めてしまいたい気持ちに流されるまま、その施設の申し込みをすることにした。

 

(長くなるので、続きは後日)